大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

※写真はイメージです (GettyImages)
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「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第12回の質問は「押入れなどの狭い場所に入るとワクワクするのはなぜ?」です。

*  *  *

【Q】押入れなどの狭い場所に入るとワクワクするのはなぜ?

【A】安全地帯にいる気分になるからです。

 みなさんは、「秘密基地ごっこ」をしたことがありませんか。

 私が小学生のころは、近所に空き地がいっぱいあって、その一部には土管がいくつかまとめて置いてありました。円筒状の土管のひとつひとつは子どもの体よりちょうど一回りほど大きく、中に入ると外からは見えなくなり、包みこまれるような安心感がありました。

 そうした空き地は格好の遊び場で、私も近所の子どもたちと一緒に「敵が来たぞ、隠れろ」と叫びながら、“秘密基地”に見立てた土管のそれぞれに走りこみました。しばらくして“もう安全”となったら、出てきて“無事であること”を喜びあうのでした。

「秘密基地ごっこ」は襲ってくる敵から隠れてやり過ごす練習です。動物には、襲ってくる捕食者に対して危険を感じ、戦う、逃げる、隠れるなどの対処行動をとる本能があります。私たち人間にもその本能が備わっています。しかし、子どもの時期には、腕力や走力が未熟なので、“隠れる”対処が先行するようになっています。

 つまり、“戦う”や“逃げる”より、子どもとして有効な“隠れる”という行動を練習して、将来の危険な事態に備えるように遺伝情報が発動しているのです。現代の文明社会では、そうした危険な事態はほぼありませんが、それでも遺伝子の“しわざ”によって危険に対して準備しておかないと気がすまないようになっています。だから、遊びなどの想像の世界で練習するのです。

 土管や押入れなどの狭い場所に入るとワクワクするのは、想像の世界で危険な敵をやり過ごせる安心感が得られるからです。「危険だ」と思うと、アドレナリンという興奮物質が脳内で分泌されます。「でも、隠れている自分は大丈夫」となると、安心感のほうが強くなります。この安心できる興奮がワクワク感なのです。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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