フィルムには相反則不軌という、微弱な光を長時間撮影すると実効感度が低下する特性がある。

 だから、長時間シャッターを開けて星の光跡を写してもそれほど夜空は明るくならない。ところがデジタルカメラは露出を増やせば増やすほど光を蓄積して夜空を明るく再現してしまう。

 比較明合成はそれを回避するために長時間を分割して写す表現方法のひとつだと思うんです。

 そもそも、比較明合成というものを考えてソフトウェアをつくった人は天体写真の人たちです。

 フィルム時代には当たり前のように撮っていた星の日周運動の軌跡をデジタルカメラでも写したい、そういう純粋な探究心から生み出された技術だったのに、「合成」という言葉だけが独り歩きしてしまった。

 この技術は、原理的には長い露出時間を分割した多重露出にすぎないわけですから、「比較明多重露出」とか、名称を変えるべきだと思います。(聞き手・構成/アサヒカメラ編集部・米倉昭仁)

※1 HDRは露出を変えて写した複数枚を重ね合わせて合成することで白とびや黒つぶれの少ない写真を得る手法

※2 ハイレゾリューションモードは撮像素子を微妙に動かして写した複数枚を重ね合わせて合成し、高解像度の画像を得る手法

※『アサヒカメラ』2020年3月号より抜粋。本誌では宮武さんのインタビュー全文や作品を掲載している。