カクレマンボウは温帯海域を好み、今までマンボウと間違われてきただけで南半球にはたくさんいるようだ。しかし、北半球での出現はかなり珍しく、確認されているのはまだ5例以下。北半球へは迷い込んできたのではないかと推測されているが、詳細は不明。

 カクレマンボウは125年ぶりのマンボウ属の新種として海外ニュースで話題になったが、その際、「2トン級」と盛られて紹介されたせいで、「カクレマンボウも2トンになる」と都市伝説と化しそうな誤解が既に生まれている。非常に困る。数百kgにまで成長すると予想はされるが、カクレマンボウで実際に計量された体重データはまだ52kgまでである。

 マンボウ科魚類は世界中で種が混同されている。正確な情報を収集するためには、マンボウ科は1種ではないことを多くの人に知ってもらう必要がある。これを読んだあなたも是非カクレマンボウのことを友達に教えてあげて欲しい。頼む、お願いだ!

【主な参考文献】Nyegaard M, Sawai E, Gemmell N, Gillum J, Loneragan NR, Yamanoue Y, Stewart A. 2018. Hiding in broad daylight: molecular and morphological data reveal a new ocean sunfish species (Tetraodontiformes: Molidae) that has eluded recognition. Zoological Journal of the Linnean Society, 182: 631-658.
https://academic.oup.com/zoolinnean/article-abstract/182/3/631/3979130

●澤井悦郎(さわい・えつろう)/1985年生まれ。2019年度日本魚類学会論文賞受賞。著書に『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)、『マンボウは上を向いてねむるのか』(ポプラ社)。広島大学で博士号取得後も「マンボウなんでも博物館」というサークル名で個人的に同人活動・調査研究を継続中。Twitter(@manboumuseum)で情報発信・収集しつつ、なんとかマンボウ研究しながら生活できないかとファンサイト(https://fantia.jp/fanclubs/26407)で個人や企業からの支援を募っている。