小さなエレベーターに乗って、目指すは4階。

 エレベーターを降りると目の前が、パペット劇の会場となる部屋の入り口だった。

 このビルにはアクセサリー、ろうそく、演劇、洋服、人形、などなど、様々な創作をするアーティストがアトリエをシェアしているらしい。

 私は感動を覚えた。

 まるで、昔訪れたベルリンのクンストタヘレス!

 元々百貨店だった廃墟ビルをアーティストが占拠して、アトリエを構えて、カウンターカルチャーの発信地となった場所だ。

 あったよ日本のクンストハウス! まさかの中延に。

 部屋に入ると、20人くらいが座れる3段の階段状の客席が組まれており、舞台エリアは人形劇の台座があり、その周りを白布で綺麗に飾り付けてある。

 手作り感溢れる感じを想像していたが、その手作り感が何というか、「素人の手じゃない」感じがすごい。

 部屋に入るやちびは、その非日常感に圧倒されつつも目をキラキラさせている。

 白シャツにカラフルなベレー帽を被った女性スタッフが4名、案内や準備を進めている。

 そして大人5人子供5人の観客を前にし、至近距離での人形劇が始まった。

 案内をしていた女性たちが、入れ替わり立ち替わり人形を操作して、楽器を鳴らしたりセリフを言ったり、テンポよく物語が進んでいく。

 驚いたのは出てくる人形たちの造形だ。

 ダンボールを切り出し、布を貼ったり色を塗って作られているのだけど、とにかくデザインが素晴らしくて思わず、「うわあーー(ハート)」と声を上げてしまった。

 色味も可愛いし、とってもとっても素敵だったのだ。

 ちびも行儀よく膝を揃えて座り、集中して見入っている。

 20分ほどで「サヤエンドウじいさん」が終わると、白い布の幕が降ろされて、その幕に、絵の具で描かれた雨雲の映像がプロジェクターで投影されて、「あらしのよるに」の始まり始まり。

 しかし、幕は降ろされたまま。

 何と、幕の奥で演者が「やぎ」と「狼」に扮して、その影を白布に映し出す、「影絵」の演目だったのである。

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何だか夢を見たかのよう…