後日、バングラデシュ人に訊いてみた。彼はバングラデシュ人だが仏教徒だ。

「空港のトイレまで設置されましたか……」

 彼はこう説明してくれた。

「イスラム教徒はおしっこの後、先っぽを洗わないといけないんです。敬虔な信者や原理主義者ほど、それを守ろうとする。きっと彼らが空港に注文をつけたんだと思います」

 イスラム圏のトイレに入ると、「あさがお」とも呼ばれるスタイルの小便器の前でしゃがんでおしっこをしている人をときどき見かける。脇には水の入った器が置かれている。彼らはしゃがんで便器の下の隙間におしっこをしているようだった。用を足した後、容器の水で洗う。しかし空港のトイレは、便器の下に隙間などない。立っておしっこをしなくてはならないが、それでは洗うことができない。

 男性トイレの話が宗教に行きついてしまった。

著者プロフィールを見る
下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

下川裕治の記事一覧はこちら