1990年、近鉄の野茂英雄投手 (c)朝日新聞社
1990年、近鉄の野茂英雄投手 (c)朝日新聞社

 日本シリーズではソフトバンク巨人をスイープし、2019年シーズンもついに閉幕。ここからは新シーズンに向けた各チームの動きが注目されるが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、現役時代に数々の伝説を残したプロ野球OBにまつわる“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「野茂英雄編」だ。

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 8与四球を記録しながら、プロ野球記録の最少打数で完封という、いかにも野茂英雄らしい“怪投”が見られたのが、1992年8月16日の西武(西武)戦。

 この日の野茂は初回から制球に苦しみ、先頭の辻発彦にいきなり四球。送りバントで1死二塁になったあと、秋山幸二にも四球を許してしまう。だが、4番・清原和博を投ゴロ併殺に打ち取り、無失点で切り抜けた。

 4回にも秋山、清原に連続四球で無死一、二塁のピンチも、安部理を三振、石毛宏典を遊ゴロ併殺でスリーアウトチェンジ。6回1死一、二塁でも、清原を遊ゴロ併殺に仕留めるなど、いつ崩れても不思議はないのに、要所をピシャリと抑える粘投が続く。

 そんななか、7回に女房役の光山英和が左越え先制ソロ、8回にもブライアントが右越えソロと計2点をプレゼントしてくれた。

 そして、勝利投手目前の9回は“ドクターK”の本領を発揮。秋山を三振、清原を遊ゴロ、代打・デストラーデを149キロ直球で3球三振と王者・西武が誇るクリーンアップトリオを沈黙させ、なんと、被安打2、奪三振7、与四球8で完封してしまった。

「初回から四球を出してたし、調子はいつもと変わらんかったです。完封は要所で野手に助けられた結果です」と本人。

 ちなみに打数23は、パ・リーグでは82年7月14日の西武(日本ハム戦)以来、史上2度目の最少打数。セ・リーグの2例と1リーグ制時代の4例を含めると、史上8度目の日本タイ記録である。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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