そして、コンビ時代にはほとんど縁がなかったテレビの世界でも活躍し始めている。カラフルな衣装を身にまとい、ハイテンションで押し切る姿は約20年前の篠原ともえにも重なる。めちゃくちゃダサい表現で例えるなら、フワちゃんは「令和のシノラー」なのだ。

 フワちゃんという人間の最大の強みは、「YouTuber」と「芸人」の要素をバランス良く兼ね備えているところだ。人気YouTuberがテレビに出たら意外とショボく見えてしまったり、テレビタレントがYouTubeを始めたらなんだかパッとしない感じだったり、というのは誰しも見覚えがあるはずだ。この2つの世界は似て非なるものであり、両方にきちんと適応できる人は少ない。

 でも、フワちゃんにはそれができている。もともとただの明るい目立ちたがり屋だった彼女は、初めから両方の適性を備えていた。だが、コンビ時代には芸人としての自分の才能を生かし切れず、くすぶっていた。YouTubeという表現手段を得たことで、自分の面白さをストレートに出せるようになり、一気にその才能が開花した。

 先日、取材でフワちゃんと直接話してみて感じたのは「意外と芸人っぽいな」ということだった。彼女の言動は一見するとはちゃめちゃに見えるが、実は芸人としての美意識やこだわりもいっちょまえに備えている。大雑把なようで意外とちゃんとしていたりする。それもまたテレビで重宝される理由だろう。

 YouTuberと芸人という二刀流を見事に成功させたフワちゃん。めちゃくちゃダサい表現で例えるなら、彼女は「タレント界の大谷翔平」なのだ。

 面白くておしゃれで最先端なフワちゃんについて文章を書こうとすると、どうしてもダサくなってしまうのは避けられない。本人が猛ダッシュで時代の先を行き過ぎているため、文章という重くて硬い表現はどうしたって周回遅れになってしまう。

 彼女を見習ってキレのある一言でまとめるなら、何かと暗いニュースが多いこの時代に、1人で派手にポジティブに輝くフワちゃんはとにかく「最高」ってことだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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