42歳での電撃結婚。そして伝説の高齢出産から2年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は戯曲の執筆作業について。作業が遅々として進まない原因とは?
【チビちゃんにはマネして欲しくない「寸止め」という行動とは…】
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舞台の脚本を書いている。
劇作はこれで6本目。
結婚前には空いた時間でとにかく戯曲や劇作指南本を片っ端から読んで、多いときには週5本芝居を見ながら指折り場数を数えて見終わるとノートにタイムと構成を書き出したりした。
アラバールの「戦場のピクニック」を現代にアレンジして構成を崩さずに書いてみたり、別役実さんの講義が書かれた本にそって課題をやってみたり。演劇の歴史を遡ってみたり。
リアリズム、叙事詩、自然主義、ロマン主義。
過去、たくさんの作家達が、自分の周りの世界がどのように機能しているかについて、その問題点を、分析して、自分が掴み取った感覚を観客に提示しようと試行錯誤した歴史がある。
有名な戯曲の数々は、その作家が歩んだ人生と時代背景を結びつけて読み解くと一気に理解が深まる。
「問題には原因が必ずある」
「変化を起こす事は可能だ」
という世界を提示した人がいれば、
「原因を探る事は可能だが、解決は不可能だ」
という世界を書いた人がいて、
「人間は常にぐるぐる同じ場所を旅しているだけだ」
という演劇を生み出した人もいる。
この人は、戦争を経験し、通り魔に刺されて命を落としかけたという経験を持つ。
世界はどういう仕組みでできているのか、人々は何を信じ、何を手掛かりに生きればより良い人生を歩む事ができるのか。数多の作家たちが、時代を超えて、作品を通したメッセージを残している。
3.11のショックは大きかった。
これまで、なだらかに地続きに人生が続いていくというビジョンを何となく持っていたのだが、人生は、ある日、ある瞬間に劇的に変わってしまうのだという事実を突きつけられた。