荻上:それが香港だけでなくて、当然、中国国内のさまざまな場所でも行われているわけですよね。中国では人権派弁護士への弾圧とか、あるいは「08憲章」などの民主派の声を挙げていたインテリ層に対する弾圧が非常に話題になりました。ウイグル・チベットに対する弾圧もそうですけど、今でもこの知識人への弾圧は続いているわけですか。

峯村:私がいた2013年までと比べても相当強まっていると言えると思います。何人か知っている弁護士さんたちは捕まっていないんですが、もう北京にはいられない。地方にある実家に帰れという形でほぼ強制的に北京から追い払われている人もいる。そういう意味では相当今、緊迫した状況と言えると思います。

荻上:北京にいられないとは、どういう状況なんですか?

峯村:実質的に北京というのが中国にとっては重要な場所だからです。首都で活動を起こされると外国メディアに報道されたり、政府にとって不都合な何かしらの活動を起こされたりするリスクがあるということで、地方に追いやることが彼らの狙いなんだろうと思います。

荻上:知識人の分散、ネットワークを作らせないということですね。例えば、ご著書の中でも峯村さんが長時間拘束されて「この場所から出ていけ」と当局から解放されたあとも、ずーっと車でついてこられて、空港で入管をパスするまでずっとついてきたという場面があります。ほかの人にも似たような圧力が行われているということですか。

峯村:そうですね。中国の役人組織というのは非常にしっかりしているので、自分の任務をしっかりやるという使命がきわめて強いですね。職務としてはすばらしいことなんですけど、われわれ外国メディアにとってみると非常にめんどうくさくて、一筋縄にはいかないわけです。

荻上:そうした中で政治の動きについて取材しようとすると、まず公式な記者会見があるわけですよね。でもそれはあくまで大本営発表なので、「~と共産党が主張していた」というだけでは、それが事実かどうかは分からない。政府の裏側を知るということも非常に難しいですよね。この点はどのような工夫というか困難があるんでしょうか。

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会見場のトイレに潜んで当局者に接触…