6月から始めたインスタにも注目が集まる石橋貴明(C)朝日新聞社
6月から始めたインスタにも注目が集まる石橋貴明(C)朝日新聞社

 とんねるずの石橋貴明が、元「野猿」の平山晃哉、神波憲人と共に新ユニット「B Pressure」を結成することを発表した。11月1日に3曲入りの1stシングル『Freeze』がリリースされる。10月28・29日には大阪のROCKTOWNでお披露目ライブ「サビ落とし」が開催されるという。

 野猿の中心メンバーだった3人が音楽ユニットとして復活するというニュースは、往年の野猿ファンを歓喜させることになった。ネット上では彼らの活動再開に対する喜びと興奮の声があふれている。

 ただ、野猿のことを知らない人にとっては、なぜ今回のことでそこまで多くの人が騒いでいるのか分からないかもしれない。野猿とは何だったのか、簡単に振り返っていくことにしたい。

 野猿とは、とんねるずと彼らの番組スタッフ数人から成る音楽ユニットだ。1998年にシングル『Get Down』でCDデビューを果たし、2001年まで約3年半にわたって活動を続けた。シングル10枚、アルバム3枚をリリースして、日本武道館でもコンサートを行い、「NHK紅白歌合戦」にも2年連続で出場を果たすなど、輝かしい実績を誇る人気ユニットだった。

 野猿のメンバーは、とんねるずの2人以外はただの一般人である。当然、歌や踊りの素養はないし、カメラの前で堂々と立ち振る舞う技術も度胸もない。そんな彼らが、なぜ現在まで語り継がれるほどの伝説を残すことができたのだろうか。そこには、ほかの人には真似できないとんねるず流のプロデュース戦略があった。

 野猿結成のきっかけは「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)で行われていた「ほんとのうたばん」という企画だった。石橋と中居正広がMCを務める他局の音楽番組「うたばん」(TBS系)をそのままセルフパロディーしていたのだ。この中で、とんねるずの2人がKinki Kidsに扮して歌を披露したとき、裏方のスタッフが「ジャニーズ・シニア」と称して彼らの後ろで踊ることになった。

 もちろん、素人である彼らは満足に踊ることができず、醜態をさらすことになった。このような形で、身内のスタッフを表舞台に引っ張り出すのがとんねるずのお家芸だった。ただ、この企画はここで終わらなかった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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