こういった多彩な展開も好評を博し、累計発売枚数は驚異の80万枚を売り上げるという人気きっぷとなった。それだけではなく、実際に発売開始後から北海道来訪観光客や鉄道利用者が増加に転じるなど、その人気は経済効果からも見て取ることができた。

 今までにない「お得感満載」なご当地入場券。効率重視なら車で巡ることになるが、それでも一筋縄ではいかない。私にも、予備知識を頭に入れず1枚ずつ購入し、途中で「列車カード」用の応募券は切り離さなければいけないことに気が付き、完全保存用を求めて1枚余分に買い直してきたという、収集当初の苦い思いがある。

 さらに、対象駅には無人駅も多く、近隣の市町村役場、観光案内所、温泉施設、コンビニ、スーパー、もはやほとんど個人宅ではないかという個人商店に至るまで、バラエティーに富んだ(?)販売所にも奔走させられてきた。

 例えば、道中迷いながらもやっとの思いで日高本線・浜厚真駅に着いたときのこと。「ここから約20キロメートル先の◯◯で販売。徒歩での購入は困難だと思われます」という無情な張り紙を見たときは、さすがに車で来た私でさえ大きな衝撃を受けた。

 その後小一時間かけて販売店のコンビニにたどり着くと、香川ナンバーの車を見た店員さんが驚き、「こんな遠くまでありがとうね」とねぎらいの言葉をかけてくれた。「何人かはきっぷを買いに来たよ。ここまで歩いてきたっていう人もいたけど、何時間かかったんだろうね」「ほんとはバスが出ている早来駅(室蘭本線)から来た方が楽なんだけど、告知がうまくいかないねぇ……」と、課題も多かったようだ。

 また、発売時間にも注意が必要だった。前述したように取扱店舗が駅以外のことも多いからだ。24時間営業のコンビニなら安心できるが、駅を含むほかの販売所では販売時間に制限があり、場合によっては営業開始時間の早い順番に巡ったこともあった。

 さらに注意したのが、バスの運行時間。1例を挙げると、「根室本線・浜中駅」の入場券を販売する“霧多布温泉ゆうゆ”までは駅から徒歩2時間以上はかかるため、多くの列車利用者は浜名駅からバスを利用する。しかし、目的地までのバスは1日3本。しかも平日のみの運行なのだ。これを知らずに本数の少ない列車で、しかも休日に来た人がいたら……その落胆の大きさは計り知れない。

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「廃線予定の駅」だからこそ、思い出として集めたい