2015年、紅白歌合戦での小林幸子 (c)朝日新聞社
2015年、紅白歌合戦での小林幸子 (c)朝日新聞社

 歌手・小林幸子が今年で歌手生活55周年の節目の年を迎えた。

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天才少女歌手として脚光を浴び、10歳でデビューしたのはちょうど前の東京五輪が開催された1964年のこと。

 それから55年、芸能界の最前線で活躍し続けているのもスゴいことだが、会うたびにいつもその若い感性、エネルギッシュさに驚かされる。

 小林といえば、「おもいで酒」や「雪椿」など数多くのヒット曲を世に放ち、「NHK紅白歌合戦」に34回出場するなど演歌歌手として類まれる実績を持つ一方、近年はコミケやニコニコ動画などでも活動している。

抜群の歌唱力を活かし、初音ミクなどボーカロイドが歌う楽曲、いわゆる“ボカロ曲”に挑戦するなど新境地を開拓し、若い世代からは“ラスボス”の愛称で支持されている。

■米津玄師の「Lemon」にピンと来た

 先日も、最近の音楽業界の話題から昨年大ヒットを飾った米津玄師の「Lemon」に話が及ぶと、「あの曲をたまたま初めて聞いた時、『何だか“ボカロP”が作るようなメロディーの曲だな』と思ったんですけど、後になって元々はボカロPをなさっていた米津さんの曲だと知って『やっぱり!』って……」と明かしていた。

「ボカロP」とは、ボーカロイド技術を駆使して作曲や編曲など音楽プロデューサー的な創作活動を活動を行うクリエーターの総称で、近年では音楽業界のメジャーシーンで活躍する者も増えている。

 小林以外のベテラン歌手の中にも、そうした「ボカロP」の存在を認識している者はいるだろうが、とはいえ、そうした他の歌手が「Lemon」を耳にした瞬間、前述のようなイメージがすぐに頭をよぎるかとなると話は別だ。

 実際に、プロの歌い手として人気ボーカロイドの初音ミクの名曲「千本桜」「みくみくにしてあげる♪」をアレンジした「さちさちにしてあげる♪」など多数の「ボカロ曲」を歌唱した経験のある小林ならではの感覚なのだろう。

「はじめは『面白そうだな!』と思って歌ってみたんですが、『ボカロ曲』はコンピューターで作成した曲ですからね。これまで演歌や歌謡曲、スタンダードナンバー、ジャズ、シャンソンと色々と歌ってきましたけど、あり得ない音階やメロディーラインが出てきたり、ブレスする所がなかったりするんですよ。初音ミクさんは36節ある曲でも1回も息継ぎなしで歌っちゃう。でも、人間は息をしないといけないですからね。私もプロの歌い手として、『ここでは切れない!』と思って最後まで歌いましたが、呼吸困難になりそうになりました(笑)」

 数年前、小林に初めて『ボカロ曲』に挑戦した時の印象を聞いた時の会話が思い出される。

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三杉武

三杉武

早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身し、記者時代に培った独自のネットワークを活かして芸能評論家として活動している。週刊誌やスポーツ紙、ニュースサイト等で芸能ニュースや芸能事象の解説を行っているほか、スクープも手掛ける。「AKB48選抜総選挙」では“論客(=公式評論家)”の一人とて約7年間にわたり総選挙の予想および解説を担当。日本の芸能文化全般を研究する「JAPAN芸能カルチャー研究所」の代表も務める。

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