ハウス教授らは、微生物反応器にうんこを入れ、食糧に転換しています。これは将来の長期宇宙飛行をより容易にする可能性を秘めているのです。食べ物をたくさんロケットに積まなくても、自分たちのうんこをリサイクルして、より長期間宇宙に滞在できるようになるからです。

 このうんこ由来の食糧の生産スピードは、トマトやジャガイモよりも速くなる可能性があるそうです。さまざまに味つけすれば、飽きることなくうんこが楽しめる「うんこのフルコース」が味わえる日も、そう遠くはないかもしれません。でも、うんこからできたこの食べ物は、もう「うんこのにおい」はしないのでしょうか。人間は食べ続けるとにおいに慣れてきますので、納豆のにおいがだんだんと好きになるように、うんこのにおいがしても、「いいにおい」に感じられるようになるかもしれませんね。

 ここでひとつ注意! ハウス教授らの方法では、魚の水槽にも使われている無害な菌を使ってうんこから栄養分を抽出しています。この処理によって、有害な病原菌などは死滅しているということです。ですから、けっしてみなさんは、処理していないうんこをそのまま食べないようにしてくださいね。約束ですよ。

 ちなみに、宇宙食以外でもうんこを利用しようとする試みが始まっています。健康な人のうんこを、腸の不調を訴える人の腸に入れる医学的な治療法が開発されました。腸の不調の一部は腸内細菌(腸内フローラ)のバランスに由来するので、健康な人の腸内の善玉菌を移植するのです。

 これにより、腸内のバランスを取り戻し、健康的な腸を取り戻すことができるようです。実際、お腹が緩い・うんこが出ないという人が、健康な排便ができるようになった事例があります。さらに、肥満の一部もこの腸内細菌に関係しているらしく、健康な人の善玉菌を移植すると、肥満が改善されたという研究結果もあります。この治療法は近いうちに広く普及することでしょう。いやはや、じつに実のある話ではありませんか。

【今回の結論】うんこを食べるようになる可能性はある!

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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