さて、リスベラトロールは健康によいのか? ぼくはかなり懐疑的だ。

 たとえば、動物実験でリスベラトロールを投与して寿命が伸びたという研究がある。しかし、リスベラトロールは赤ワイン1リットルにわずか1.5~3mgしか入っていない。

 人間がこの動物実験と同じ量のリスベラトロールをワインから摂取しようとすると、毎日1000リットルのワインを飲み続けなければいけない計算になる(Baur JA et al. Nature. 2006 Nov 16;444(7117):337–42)。無茶な想定ではなかろうか。

■抽出物が健康によいという臨床データはほとんどない
 
 サプリメントとしてリスベラトロールの錠剤も現在売られている。しかし、その効果も安全性も十分に検証されていない。このような商品には手を出さないほうがよいと思う。

 同様に、ポリフェノールの錠剤などもよくネットで販売されたり、患者さんが持っていたりするのを目にするが、こういった抽出物が健康によいという臨床データはほとんどなく、かえって毒性が強くなっている場合もある。

 たくさん入っていればよいというものではないのだ(アルカリ性食品やビタミンの議論を思い出してほしい)。

 砂糖と果物、果物と果物ジュースは違う。当然、同じ根拠でワインとリスベラトロールも違う。ワインが健康によい(かも)というデータは本書で紹介しているが、リスベラトロールのサプリメントについてはそんなデータはほとんどない。メーカーの宣伝文句はまったくあてにならない。ネットで情報を得るのならば、製造者「以外の」第三者の評価を見るのが一番だ。

 特定保健用食品は、消費者庁が許可した健康によい(かもしれない)食品を認定したものだ。しかし、この中で病気の予防効果が示されているのはカルシウムと葉酸のみであった。

 あとはみな比較的緩い基準で「健康に役に立つ可能性がある」にすぎない。米国でもフラボノイドの錠剤が売っていたりするが、高血圧や肝機能障害などの副作用が見られることもあり、また妊婦には使用が認められていない。サプリメントとは決して安全とは限らないのだ。

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健康に有害なビタミンもある