■取りすぎると健康に有害なビタミンもある

 また、ビタミンサプリメントも一般には健康に寄与しないことから、現在では万人には奨められていない。バランスの取れた食事を取っていれば十分量のビタミンは得られるし、ビタミンAのような脂溶性のビタミンは取りすぎると健康に有害ですらある。

 ビタミンCのような水溶性ビタミンでも取りすぎると腎結石などのリスクを増やす。この話はすでにした。ビタミンCなどの「抗酸化作用」を持つビタミンは老化やがんの予防に役に立つと言われてきたが、これまでの研究は総じてそういう効果には否定的だ。机上の理論が本当かどうかの保証はないのだ(Coulter ID et al. J Gen Intern Med. 2006 Jul;21(7):735–44, Sesso HD et al. JAMA. 2008 Nov 12;300(18):2123–33)。

 ビタミンEなどはむしろ前立腺がんのリスクを増やしてしまうのでは、という皮肉な結果が出ている(Klein EA et al. JAMA. 2011 Oct 12;306(14):1549–56)。抗酸化作用があれば健康に良い、というのは単純に過ぎる議論である。

 というわけで、ワインに含まれるレスベラトロールは健康に寄与していない可能性が高い。リスベラトロールのサプリメントも現段階では飲むのはお薦めしない。

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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