ONEPIECEのナミ(撮影/今村拓馬)
ONEPIECEのナミ(撮影/今村拓馬)
「ドラゴンボール」の亀仙人(撮影/今村拓馬)
「ドラゴンボール」の亀仙人(撮影/今村拓馬)
「男はつらいよ」の寅さん(撮影/今村拓馬)
「男はつらいよ」の寅さん(撮影/今村拓馬)
佐々木小次郎(右)と宮本武蔵。2人は元日本代表だ(撮影/今村拓馬)
佐々木小次郎(右)と宮本武蔵。2人は元日本代表だ(撮影/今村拓馬)

 7月に東京ドームシティで開かれた「世界コスプレサミット」に、40の国と地域から各国を代表するコスプレイヤーたちが集結した。それぞれ自慢の衣装でポーズを決めると、観客席からは拍手や声援が沸き起こった。

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*  *  *

 顔をしかめるような猛暑のなか、サブカル素人の記者は東京ドーム隣のイベント会場にいた。午前10時の開場とともに、コスプレ姿の若者たちがどこからともなく表れ始める。世界的コスプレイベントの初の東京開催ともあって、その数はみるみる増え続け、あっという間に東京ドームシティ内はコスプレイヤーで埋め尽くされた。

 そんな異様な雰囲気に怯みかけた記者だったが、「コスプレ写真を撮りまくれ」という編集長の指令を果たさなければいけない。自らを奮い立たせ、コスプレイヤーたちの写真撮影の列に飛び込んでいった。

 最初に撮影に応じてくれたのは、「ONE PIECE」のナミ姿の女性だ。オレンジ色の髪に、黄色のサロペットなどを組み合わせ、見事にキャラクターを演じている。じっくり話を聞きたかったが、後ろにはすでに順番を待つ人たちの大行列。背後からの「早くしろよ」という“心の声”を聞き取った記者は、写真だけ撮らせてもらって、次の列へ。

 次に声をかけたのは「ドラゴンボール」の亀仙人に扮した男性だ。やはり、自分が知っているキャラクターに出会うと嬉しいものだ。

「もともと頭が薄かったのでスキンヘッドのキャラばかりやってます。他には『進撃の巨人』のピクシス司令とかですね」

 ピクシス司令とは一体誰なのだろう……。そんな疑問を抱きながら「サングラスを取ってもらえますか?」とお願いすると、意外にもつぶらな瞳が印象的なナイスミドルの素顔が。コスプレを始めたきっかけは、通っていたメイド喫茶で店員さんから「亀仙人やれば?」と言われたことらしい。そのほかにも衣装は全身で3万円ほどかかっていることや、混雑に備えて甲羅を小型仕様にしていること、ヒゲはウィッグ用の超ハードスプレーで形を作っていることなどを聞くことができた。なぜなら、女性コスプレイヤーにはすぐにカメラマンの列ができてしまうが、40代男性の“亀仙人”の前には、撮影待ちの列はなかったのだ。男性コスプレイヤーに需要はない。そんなコスプレ界の悲しい現実を見たような気がした。

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