柴田投手の先発を予期していた記者もいる。

「先発した柴田投手は大会では初登板ですが、夏の大会直前の練習試合では好調で、県内の中堅学校を相手に完封もしていた実力の持ち主。大船渡に密着していたスポーツ紙の記者の間では『柴田君がいい状態で仕上がっている』と評判でした。準決勝で佐々木投手は129球を投げていたこともあり、佐々木君が先発から外れたメンバー表が報道陣に配られた際も、そこまでの驚きはありませんでした。ただ、途中から投げるものだと思っていましたが…」

 柴田投手は右サイドスローから120キロ前後の直球にスライダー・カーブ・チェンジアップを織り交ぜる、いわば“軟投派”。佐々木投手とは対照的なタイプだ。国保監督が速球対策に集中した花巻東の裏を欠こうと考えたとしても不思議ではないだろう。

結果だけ見れば、2対12と差が開いた試合になった。国保監督は試合後の報道陣の取材に対し、「この3年間の中で一番故障する可能性が高いと思った」と佐々木の登板回避の理由を説明した。その言葉の裏には、限られた戦力のなかで、「初登板」という隠し球に勝機を見出していたのかもしれない。(AERA dot.編集部/井上啓太)