韓国紙の中央日報は、対日姿勢を強化したことで、8月に入って文政権の支持率が50%台を回復したと報じている。韓国では反日感情が高まっていて、不買運動にまで発展している。これに対して世耕弘成経産相は8日、7月4日に発動した半導体材料など3品目については、国内企業から出ていた申請をすでに認可していたことを明らかにし、「我々の措置は禁輸ではない」とアピールした。つまり、ここ数カ月に大騒ぎした“韓国制裁”の中身は、実際に韓国経済に与える影響は限定的であることを認めたということだ。

 日本のメディアでは、韓国の主力産業である半導体の製造過程で日本製品が使われていることが多いため、輸出制限は韓国経済に与える影響が大きいとの分析が多い。だが、過去の同様のケースでは、輸出規制を実施した国にも高いリスクがある。

■輸出規制は実行した国に高いリスク

 2010年、尖閣諸島をめぐって日本と中国が対立した際には、中国は自国の生産力で優位に立つレアアース(希土類)に非公式の輸出枠を設け、日本に対して事実上の禁輸措置を実施した。中国にはレアアースの資源が集中していて、世界の生産量の8割を担っている。禁輸措置が発表されたあとは世界的に価格が上昇するなどの混乱がおきた。

 これに対して日本は、レアアースのリサイクルや輸入相手国の多様化、さらにはレアアースの利用自体を減らす製品の開発に成功。日本は中国へのレアアース輸入依存を09年の86%から15年に55%まで低下させた。その影響からか、中国がレアアースの輸出規制を緩和させたことは、あまり知られていない。

 今回の“韓国制裁”で同じことが起こる可能性はある。すでに文氏は、日本の輸出制限に備えて調達国の多様化や国内生産に予算を付ける方針を示している。ビジネスの世界では一度、調達先から外されると再度の契約は容易ではない。仮に韓国が日本以外での材料調達に成功した場合、日本のシェアが減少する可能性はある。

 前出の田中氏は言う。

次のページ
またもやつまづいた官邸外交