対日強硬姿勢で支持率を上げた文在寅韓国大統領(c)朝日新聞社
対日強硬姿勢で支持率を上げた文在寅韓国大統領(c)朝日新聞社

 展望なき日本と韓国の対立が、引くに引けないチキンレースとなっている。

 韓国の産業通商資源省は12日、武器に使われる恐れのある「戦略物資」について、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」(輸出優遇国)から9月に日本を外すことを発表した。

 すでに文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日、日本政府が対韓輸出規制を強化したことについて、「自由貿易の秩序と国際分業に対する信頼を損ねている」と指摘し、「結局は日本自身を含め、誰もが被害者になる、勝者なきゲームだ」と批判していた。今回の対日輸出規制強化案は、日本への報復措置と思われる。

 一方で日本政府は、現在の日韓対立は慰安婦合意の破棄、元徴用工への賠償判決、レーダー照射問題など文氏の一連の対日強硬策にはじまったと見ている。韓国への強気の対応も日本国内で一定の支持を得ており、JNNの世論調査では、韓国を輸出優遇国から除外することについて64%が「妥当だと思う」と答え、「妥当だと思わない」の18%を大きく上回っている。

■外国メディアは日韓対立を「低レベル」と表現

 だが、政治的な対立を輸出規制という通商問題に発展させてしまったことに批判も出ている。1日付の米紙ワシントン・ポストは「日本と韓国は低レベルの経済戦争に引き込まれている」と題した記事を掲載。長い年月をかけて築き上げた日韓の経済的な相互依存関係が、政治的な攻撃の道具として使われていると分析し、「両国がますます激しく対立することにつながっている」と指摘した。7月には、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「トランプ化する日本外交」と題した記事を掲載。韓国への輸出規制だけではなく、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から正式に脱退し、31年ぶりに商業捕鯨を再開したことも紹介して「日本が旧来の体制の制約から抜け出したがっている」と論評した。政治ジャーナリストの田中良紹氏は、こう話す。

「安倍外交は官邸主導で進められていて、外務省は脇に置かれています。そこで影響力を強めているのが経済産業省で、文政権に打撃を与えるために、輸出規制の強化に踏み切った。ただ、韓国への輸出規制が最初に実施されたのは7月4日で、参院選の公示日。一連の措置は憲法改正が実現できないことに不満を持つ安倍首相の支持者に対してアピールした側面もある。それが結果的に韓国の強い反発を招いたことで逆に文氏の支持率が上がり、政権基盤を強くしてしまった」

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“韓国制裁”で文在寅政権の支持率が上昇