ここで、安倍首相と三原氏による政見放送に切り替わる。三原氏は好景気に沸く日本を紹介する。

「アベノミクスのもとで、経済は好調ですね。史上初めて47すべての都道府県で、有効求人倍率は1倍を超えています。地方の観光地に、たくさんの外国人の方々が押し寄せ、にぎわっているという話もよく聞きます。消費額にして4兆5000億円の一大産業が生まれ、地方経済も明るさを増しています」

 同じ日本の話なのに、まったく違う世界。動画を紹介したツイッターの投稿でも、こう書かれていた。

<2つを対比すると、まるで日本という国の中に、全く違う別世界が存在するかのように思える。安倍総理と山本太郎さん。どちらが言ってることが正しいのか。もはや日本は完全に分断されてしまったのだろうか?>

 報道機関の情勢調査などではれいわの獲得議席数は1~2議席と予想されている。れいわの選対関係者も「インターネットや街頭演説で話題になることと、実際の投票行動は別」と冷静だ。れいわは今回、比例区で二人の障害者を特定枠に入れているので、山本氏が当選するには、比例区で3議席以上獲得しなければならない。山本氏の戦略はどこにあるのか。前出の畠山氏は言う。

「山本氏が比例区に回ったことで、れいわ支持者から『何とかしなければ』という気運が高まりました。一方で、比例区で得票率2%以上を獲得して政党要件を満たせば、山本氏が落選しても、テレビの討論番組に政党の代表として出演できます。次の国政選挙でも、山本氏の選挙運動が拡大する可能性は高い」

 山本氏が掲げる「消費税廃止」は、ツイッターで投稿されるキーワードのトレンドで上位に入り、参院選の争点に急浮上している。立憲は消費増税は「凍結」と公約しているが、激戦の選挙区では一歩踏み込んで「廃止」を訴える同党の候補者も注目を集めている。国民民主党や日本維新の会、共産党なども、消費に悪影響が出るとして、消費増税の中止を訴えている。

 政見放送の比較動画で山本氏と安倍首相が主張した2つの日本。有権者が見ているのは、はたしてどちらの光景なのか。そして、どの政党の政策が「課題大国」の日本に有効なのか。有権者に見えている「日本の現在」が、選挙の行方を決める。(AERA dot.編集部/西岡千史)