ポッポの丘開設のきっかけ、昭和63年製いすみ200形の「車両価格」は200万円(撮影/安藤昌季)
ポッポの丘開設のきっかけ、昭和63年製いすみ200形の「車両価格」は200万円(撮影/安藤昌季)
車両の一部は農産物直売所として開放。いすみ200形内の「カフェTKG」では人気の卵かけご飯も楽しめる(撮影/安藤昌季)
車両の一部は農産物直売所として開放。いすみ200形内の「カフェTKG」では人気の卵かけご飯も楽しめる(撮影/安藤昌季)
ディーゼル機関車DE1030が2両のブルートレインを牽引する(撮影/安藤昌季)
ディーゼル機関車DE1030が2両のブルートレインを牽引する(撮影/安藤昌季)
10t入換動車に牽引された4両の車掌車にも乗車できる(撮影/安藤昌季)
10t入換動車に牽引された4両の車掌車にも乗車できる(撮影/安藤昌季)

 長年走り続けて役目を変えた鉄道車両。その多くが引退とともに廃車解体されてスクラップとなる。ごく一部の車両だけが解体を免れ「保存車両」となる。

 保存車両は「動態保存」と「静態保存」があり、「動態保存」は、主に蒸気機関車など、産業遺産的な価値を有する車両を現役に近い状態で維持するもので、多額の経費がかかる。

 例えば、名古屋市は明知鉄道が保有するC12形蒸気機関車を、観光の目玉とするために動態保存化しようと試算したが、初期費用だけで5億7000万円が必要との試算が出された。C12形は旧国鉄が保存する本線用蒸気機関車では最も小さな形式だが、それでもこの費用である。現役時のように元気に動く保存車両を、いつまでも見たいのは鉄道ファンの夢ではあるが、動態保存についてはとても個人の手に負える金額ではない。

 一方、保存車両を動かさずにレール上に置いておく「静態保存」は、鉄道博物館などの企業による保存施設だけではなく、個人でも保存している人が存在する。

 では、本当に鉄道車両を個人が保有しようとした場合、どのような障害があり、どれくらいの経費がかかるのか。千葉県いすみ市で22両の保存車両を保有する、鉄道リゾート施設「ポッポの丘」を運営する、ファームリゾートISUMI 鶏卵牧場の村石愛二社長を取材した。

■車両により千差万別な残存価額

《鉄道車両の購入方法ですが、まずはこちらから鉄道会社に問い合わせをします。断られることも多いですが、譲渡してもいいという話になることもあります。合意できれば条件面の話となりますが、有償譲渡の場合は、残存簿価で価格が異なります。数十万円~数百万円(以後数字は全て税抜)程度と、車両ごとにまちまちです。

 ただ、鉄道会社によっては、処分が決まっていたり、譲渡に応じてもらえないこともありますね。あと、最近では鉄道会社自身がホームページで「車両の引き取り先を募集する」ケースもありますので、条件が整うなら応募されるのもいいのではないでしょうか。

 こうした仕事をしていると、ノウハウを持つ方々と知り合いになります。話を伺っていると、個人だと断られるケースもありますが、保存の実績があったり、法人だったりすると話が変わる場合もあるようです(経験上、大きな鉄道会社は話が非常に通りにくいことが多いです)。

 ポッポの丘開設のきっかけは、いすみ鉄道の鳥塚前社長に「いすみ200形を200万円で買わないか」とのお話をいただいたことです。当時は輸送や保存のノウハウがなく、JR貨物北陸ロジスティックス株式会社様には大変お世話になりました。最近では、車両輸送にノウハウがあるアチハ株式会社様にもご協力をいただいております。

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輸送に必要なレンタルトレーラー代は1日100万円