カメラ一台、ズームレンズ一本で写真人生を完結できない意志の弱い筆者は、機材の数だけ写真の表現の幅が広がると信じている。このため機材が増殖、管理と保管に悩むことになる。カメラ、レンズは精密機械だからホコリや湿気が大敵だ。これらの敵からどうやって大切な機材を守ればいいのだろうか。
■機材の種別ごとに トランクを分ける
実践している機材保管方法はアルミ(ゼロハリバートンなど)かプラスチック(ペリカンケースなど)のトランク型カメラケースに、メーカー、あるいは同じシステムごとに分けて収納し、防湿剤を放り込む方法。スタジオ撮影にはクルマで向かうので、ケースごと持っていけばレンズ、アクセサリーなど忘れ物の心配はなくなる。
機材は収納できても、デジカメのアクセサリーの生命線はバッテリーと専用のチャージャーだ。同じメーカーでも機種が異なればチャージャーが異なることもあるので、機種別にシールやタグをつければ万全。少々乱暴だけどチャージャーは専用のカゴを用意しそこに放り込んでおく。ケーブル類もタグづけし、予備のバッテリーがたくさんある人は使い始めの年月日を書いたシールを貼っておく。
では、防湿庫はどうか。確かに機材保管は安心安全である。ただし、欠点もある。それは、機材が多いと奥に収納した機材を取り出したり見つけたりすることに労力が必要となることだ。使用頻度の多い機材を前面に置いておくのが最善の方法になるが、意外に便利なのは電源を使わず除湿剤を放り込むタイプの簡易型の防湿ケースだ。ふたを開ければ、上から機材を見渡せるし、目的の機材がすぐに発見できる。代替え品としては、大型のプラスチックの食品保存容器や押し入れ衣装ケースという方法もある。ただし除湿剤は不可欠だ。
所有機材が多い人は収納する機材の名前を書いたシールを用意し、ふたや引き出しに貼っておく。労力を惜しまないなら機材リストを作り、ケースごとに貼る手もあろう。
■人が快適なら、カメラ/レンズも快適
意外にも機材にとっても人にとってもいいのは、居間など常に人が生活している場所にある本棚などに放置プレーすること。これは所有機材が膨大だった大竹省二さんも話していたし、立木義浩さんの事務所のサイドボードの上にはカメラが並んでいた。昔のニコンの取説には、速写ケースの前蓋を外し、カメラ本体を露出させ、風通しのよい部屋の壁のフックにストラップをかけてぶら下げておけと書いてあった。いまは多くの家にエアコンがある。人間が快適に過ごせるなら機材にも快適なのだ。
ただし、この方法の欠点は機材にホコリがつくこと。また交換レンズはどうするかという問題もある。でも、ホコリがつくほど機材を放置していては写真表現者として失格。管理しきれないほどの機材があるというのもマズい。常にホコリを払い、ボディーを磨き上げるほうが機材も幸せというものだ。
この方法で注意したいのは家人から邪魔もの扱いされると同時に機材の種類や台数を学習されてしまう可能性があること。日々、目にしていればライカM3とM4の見分けがつくようになる。これでは後々困る。やはり機材はきちんと収納し管理しておくほうがいいのだ。(解説/赤城耕一)
※アサヒカメラ2019年6月号より抜粋