――ありがとうございました。(聞き手/全国不登校新聞編集長・石井志昂)

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 一口に「中高年のひきこもり」と言っても、そのかたちは実に多様です。そして、杉本さんの話のポイントは「共感」だったと私は思います。

 子どもが「オレの顔を見たらみんな逃げ出す」と言っていたら、私だって杉本さんの親と同じように「そんなことないよ」と言ってしまいます。でも、その一言は本人からすれば「私の苦しさが否定された」と思うのです。

 逆に否定も肯定もせずに「つらかったよね」と共感することで、本人は「苦しい自分が受け入れられた」と思い、心を開いて快方へと向かう。それが杉本さんの例でしたが、これは理想論ではなく、数々のひきこもり経験談で語られてきた実践的な手法です。

 こうした手法が広がっていくことは、川崎事件や練馬事件のように許されざる犯行を防ぐ手立てのひとつになるのかもしれない。私はそういうふうにも思っています。

■プロフィール
すぎもと・けんじ/1961年、札幌市生まれ。高校で不登校中退。中退後と20代後半に長期間、ひきこもった。現在はフリーターのかたわら、『ひきこもる心のケア』(世界思想社)を出版。WEBサイト「インタビューサイト・ユーフォニアム」運営。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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