もちろん、しつけとして教えていくことも必要ですし、叱ってはいけないという意味ではありません。たまたまでも、できたときに注目をするのです。どの行動を無視するか、代わりにとってほしい行動は何かをあらかじめ考えておきましょう。

 また、好ましくない行動が起きる場所や時間帯、そのとき同時に起きていること(園から帰って疲れているのかも、など)、親の感情や表情、そうなったときに自分に言い聞かせることなどを書き出し、あらかじめ作戦を立ててから取り組んでみましょう。

■ステップ4 「CCQ」で指示を繰り返す

 小学5年生のある男の子は相談室で、こんなことを話していました。

「うちの親はうざい。俺がテレビを見ていたら、突然、いい加減にしなさい!って怒鳴るんだ。あんな言い方されるとすごい嫌な気分になる」

 母親に聞くと「何度声掛けしても『うん』と言うだけで聞かなかったので、最後に『もう、いい加減にしなさい!』と叱ったんです」と言います。

 別の小学2年生の子は、きつく叱られた後に「俺はダメな子だから、今ここで殺してくれ」台所から包丁を持ってきました。母親は相談室で「こんなことを子どもに言わせるなんて」と泣きながら話してくれました。

 自分の親からそうされてきた人も多いかもしれませんが、指示を伝えるのに威嚇したり、高圧的に出る必要はまったくありません。Calm(穏やかに)、Close(近づいて)、Quiet(静かに)の、CCQを常に意識しましょう。特に、子どもがテレビやユーチューブなど、好きなことに夢中になっているときは、工夫が必要です。近づいて、肩をトントンと叩き、名前を呼んで顔を見る。そして指示は短く具体的に「テレビを消しますよ」と断定的に伝えます。疑問形や小言はやめましょう。

「一度で聞いてほしい」と期待する親は多いものです。しかしその子は、言葉の指示が入りにくいのか、次の行動に移るのに時間がかかるのか、動き出すのに時間がかかるのか、何か困難さをもっているのかもしれません。数分ごとに繰り返してみましょう。理想ではなく現実的に考えます。

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「我が子をかわいいと思えなかった」ある母親の変化