と同時に、できるのにやらないのか、そもそもやれないのか、と考えてみることも大事です。

「あと1分でやるから」と子どもが引き延ばし作戦に出たら、ブロークンレコードというテクニックを使ってみるのも手です。屁理屈に付き合わず、壊れたレコードのように、ただ指示を繰り返すのです。子どもが指示に従いやすくするように、「自分で消す? それともお母さんにリモコンを渡す?」と選択させたり、「○○したら、××できるよ」と肯定文で伝える方法もあります。

■ペアレント・トレーニングで得られるスキル以上のもの

 小学生の子を持つ30代の母親は、10回の講座を終えた感想をこう話してくれました。

「いろんなスキルが使えるようになったのはもちろん嬉しかったけど、子どものことをかわいいと思えるようになったことが一番嬉しかった」

 この母親は「我が子をかわいいと思えない」なんて、誰にも言えずに苦しかっただろうと思います。私もスキルは手段に過ぎないと考えています。私たち専門家ができるのは、人の行動の原則をなるべくわかりやすく伝えることですが、その子が何を好きで、どんなことに喜ぶのか、どんな特徴を持っているのかを知っているのは親です。親が“我が子の専門家”になるのを助けるのが私達の役割だと考えています。

 とにかく小さな成功を見つけることが大事です。うまくいかなくて叱ってしまっても「チャレンジしたから良い」「次またやってみよう」と親も自分自身を25%でほめて、許しましょう。

 ここで解説したのはペアレント・トレーニングのごく一部です。講座は自治体や児童精神科でも開催されていますし、2016年に発足した「日本ペアレント・トレーニング研究会」では指導者育成に力を入れ、より多くの人にこのプログラムを届けたいと考えています。専門書も多く出版されているので、うまくいかないと感じている人は、ぜひ手にとってほしいと思います。

(※自閉症など発達の特性によっては、より厳密なテクニックを要することがあります。その場合は、医療機関など専門家にお尋ねください)

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)