GM就任直後から危機感を持った鹿取は、改革が始まった広島を徹底的に分析した。その結果出た答えが“丸を獲得せよ”だった。敵をつかまえて情報を聞き出すのは近代戦の常道だ。「これで07年から始まった広島の総合戦略が解明できる」と鹿取は確信した。結果、逆指名制撤廃年に入団した丸を巨人が血眼でFA獲得し、いま“丸ロス”で広島が苦しんでいる。この現実は巡る因果の皮肉としか言いようがない。

 これから、チームが得た“マル”秘資料の本格解析がさらに進んでいく。だが、鹿取は球団を去った。データ分析室の新設でチームIT化の牽引者、丸獲得の最大の功労者をなぜ巨人は切ったのか、それは分析不能だ。(文・吉 元晴)