巨人・澤村は復活できるのか (c)朝日新聞社
巨人・澤村は復活できるのか (c)朝日新聞社

 どうも解せない。4月6日に行われたDeNAとの2回戦、巨人・澤村拓一の続投に失敗したシーンだ。ベンチは最多セーブ王の懇願を断ち切って5年ぶりに先発起用した。鍼治療の失敗もあって当分、長いイニングは無理だ。4回に連続四球から崩れて2失点で降板したが、序盤は球威があった。べンチは「自滅だった」と突き放すが、澤村の制球難を予見していたなら、なぜ経験値の低い大城卓三に捕手を任せたのか。「先発は5回までが責任イニング」にも拘りすぎている。

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 原辰徳監督はシーズン前から密かにオープナーの機会を窺っていた。「大いに興味がありますね」と策士の目が光っていた。去年、メジャーリーグでレイズが成功させた「擬似先発」の登板回は2イニングだ。だから、もっと早く交代させるべきだった。たとえプロ野球史上初の戦術が失敗してもだ。澤村はいま選手生命を賭けた分水嶺に立っている。157キロの豪腕は健在だ。彼の窮地を救うのはオープナーではなかろうか。

 澤村の父は息子の口答えを一切、許さないしつけに厳しい「星一徹」だった。その反動だろうか。澤村は学生時代から親分肌で、やんちゃで、破天荒だった。ドラフト1位で巨人に入団して新人王を獲得したら、力任せの暴走が顕著になった。若手選手は澤村が怖いと言う。メジャー帰りの上原浩治があきれた。

「あの生意気な態度! あいつは世界一の俺をナメてるね」

 堀内恒夫氏は全国中継で「狙い撃ちされているフォークをまた懲りずに投げて失敗するよ」と予言を何度も的中させ、「バッテリーの頭脳も、ベンチの意図も分からん」と批判した。

 澤村の暴走を列記する。澤村ファンは読み飛ばして欲しい。クライマックスシリーズ(CS)の最中、六本木のクラブで乱痴気の末に起こした暴力事件。自慢のポルシェで駐車場を暴走して阪神のチームバスを煽った危険運転事件。停止違反で起こした川崎の人身事故。座右の銘は「猪突猛進」。その意味を完全に曲解している。それでもこの暴走男には「強運」がある。

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澤村を見捨てない「中大OBライン」