神奈川県川崎市にあるAmazonの物流倉庫。「商品棚」を運ぶ自走式ロボットが導入されている (c)朝日新聞社
神奈川県川崎市にあるAmazonの物流倉庫。「商品棚」を運ぶ自走式ロボットが導入されている (c)朝日新聞社

江上隆夫(えがみ・たかお)株式会社ディープビジョン研究所 代表取締役/ブランド戦略コンサルタント。長崎県五島列島出身。大学卒業後いくつかの広告制作会社を経て、アサツーディ・ケイにてコピーライター及びクリエイティブ・ディレクターとして活躍。朝日広告賞、日経広告賞グランプリ、日経金融広告賞最高賞、東京コピーライターズクラブ新人賞ほか数多くの受賞で評価を高め、2005年に独立。「本質からブランドを組み立てる」というアプローチで、全国の中小企業から大企業までのブランドづくりを行っている
江上隆夫(えがみ・たかお)
株式会社ディープビジョン研究所 代表取締役/ブランド戦略コンサルタント。長崎県五島列島出身。大学卒業後いくつかの広告制作会社を経て、アサツーディ・ケイにてコピーライター及びクリエイティブ・ディレクターとして活躍。朝日広告賞、日経広告賞グランプリ、日経金融広告賞最高賞、東京コピーライターズクラブ新人賞ほか数多くの受賞で評価を高め、2005年に独立。「本質からブランドを組み立てる」というアプローチで、全国の中小企業から大企業までのブランドづくりを行っている

 Amazonは時価総額1兆ドル(110兆円)に史上最速で到達した企業だ。1994年に創業してほぼ四半世紀で、それを達成している。

【江上隆夫さんの写真はこちら】

 しかし、現時点でAmazonがその国の言語でサイトを運営している国は20カ国に満たない。アジアでは新たにベトナムが加わりそうだが、現時点では日本と中国のみである。

 つまり、Amazonは、まだ膨大な成長余地を持っているのだ。アメーバのようにいろいろなものを飲み込み、さらには無数のサービスを展開し、金融への進出も可能性として抱えるAmazonは、いったいどこに向かうのか。

 ビジョンやコンセプトなどに詳しく、『THE VISION――あの企業が世界で急成長を遂げる理由』(朝日新聞出版)の著者でもある、ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫さんにビジョン企業・Amazonの近未来の行き先について寄稿していただいた。

*  *  *

■2億種類の商品を持っているお店Amazon 

 創業以来、自分たちが描いたビジョンに向けて、まっしぐらに進んでいるといった意味ではAmazonは世界有数ではないかと思います。21世紀的企業としてはすこぶるつきの優等生です。

 ここでは、彼らのビジョン「ジ・エブリシング・ストア(何でも買える店)」を、彼らが徹底的に推し進めると、どのような世界が出現するのかを見ていきたいと思います。

 Amazonの2018年総売上は2328億ドル(日本円110円換算で25兆6千億円)です。これはイオン、セブン&アイ・ホーディングス、ファーストリテイリング、ヤマダ電機、三越伊勢丹ホールディングズ、高島屋などがランクインしている、日本の小売業上位10社の合計額よりも大きい。この「ジ・エブリシング・ストア」が、いかに短期間で巨大化しているかが分かります。

 Amazonジャパンが取り扱う商品は、その数、約2億種です。2億種類の商品を取り扱うお店。無印良品の全商品点数が7000点台なので、その品種の膨大さにはめまいがします。だからこそ、なのですが、いったん使い慣れると人はAmazonに依存してしまいます。

次のページ
人はクリックしながら「時間」も買っている