弘中氏は、報道では小沢一郎自由党代表や厚生労働省の村木厚子元事務次官の裁判で無罪判決を勝ち取ったと紹介されることが多いが、過去にはロス疑惑銃撃事件の三浦和義氏や薬害エイズ事件の安部英(たけし)氏の裁判でも勝利している。両者ともメディアに徹底的に批判された人物で、それを覆した実績がある。最近では、女優の高畑淳子さんの息子・高畑裕太氏の弁護士も務め、メディアスクラムを回避するための対応にも経験がある。前出の田中氏は言う。

「ゴーン氏の変装劇は、弁護団が無罪を勝ち取るための並々ならぬ決意のあらわれです。ゴーン氏と同時に逮捕され、先に釈放されたグレッグ・ケリー氏(日産前代表取締役)の弁護は、喜田村洋一氏が担当しています。弘中氏と喜田村氏は小沢氏の事件でも一緒に弁護人を務め、無罪を勝ち取った。ゴーン氏の保釈は『6月ごろ』と予測されていましたが、3カ月早まったことの意味は大きい。両弁護団は、2人から日産内部の詳細な情報を得られることになり、次の戦略を練り始めているでしょう」

 弘中氏は、ゴーン氏による記者会見について「検討します」と話している。ゴーン氏は会見で、日本だけではなく世界に向けて何を語るのか。その時、「無罪請負人」の異名を持つ最強弁護団の戦略の一端が明らかになるはずだ。(AERA dot.編集部/西岡千史)