殺害された金井貴美香さん(高崎経済大HPより)
殺害された金井貴美香さん(高崎経済大HPより)

 ここまで強い殺意を持ったのはなぜなのか。さいたま市大宮区のビルで会社員の金井貴美香さん(22)が23日午後6時ごろ、首を刃物で刺され、約1時間後に死亡した。殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは、鳥山裕哉容疑者(25)。驚くべきことに、群馬県前橋市役所に勤務する公務員だった。

 前橋市によると、鳥山容疑者は昨年4月に採用され、建設部道路管理課の技師として働いていた。上司や同僚からの評判は「まじめでおとなしい人」だったという。前橋市の関係者はこう話す。

「事件当日は、通常通り出勤しましたが、吐き気がするなど体調不良を訴え、インフルエンザが流行っているので上司から早退の許可が出ました。午後1時15分に退勤したとのことです。22日までは通常通り出勤していて、何かに悩んでいるような様子もなかったそうで、みんな驚いています」

 鳥山容疑者は、早退後に犯行現場であるさいたま市に向かったと思われる。ただ、前橋市は、鳥山容疑者が女性トラブルを抱えていたことはまったく把握していなかったという。ところが、事件前には別れ話をめぐって鳥山容疑者が金井さんに怒りをぶつけ、警察に相談が寄せられていた。

 鳥山容疑者のものとみられるSNSによると、群馬の名門校である前橋高校を卒業後、筑波大学に入学。その後に公務員になった。エリートとしての人生を歩んできたはずだ。それがなぜ、こんな凶行におよんだのか。

 精神科医の片田珠美氏は、こう話す。

「子供の頃から勉強ができてエリート意識が強く、プライドが高い。そういう人が女性から別れ話をされると、『なぜ、こんなに偉い人間である自分を捨てるのか』という怒りにつながります。怒りは自分への過大評価から起こるもの。包丁で首を刺すという行為は強い殺意のあらわれです。プライドを傷つけられた怒りで、感情をコントロールできなくなったものと思われます」

 それにしても、鳥山容疑者の二面性には理解できないことが多い。

「DV(家庭内暴力)やストーカー行為を繰り返す人は、外面がいい人が多い。ストレスを感じることがあってもふだんは我慢しているが、一度、感情が吹き出すとコントロールできない。『打たれ弱いエリート』だったのでしょう」(片田氏)

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鳥山容疑者がSNSで語っていたこと