パワハラを告発した宮川紗江選手 (c)朝日新聞社
パワハラを告発した宮川紗江選手 (c)朝日新聞社
レスリング協会による伊調馨選手へのパワハラを告発した貞友義典氏
レスリング協会による伊調馨選手へのパワハラを告発した貞友義典氏

 いま話題の言葉を『新明解国語辞典』で引くと、こう説明されていた。

【写真】レスリング協会による伊調馨選手へのパワハラを告発した貞友義典氏

<ろうがい【老害】 企業や政財界の指導者層の高齢化により、現状に即応した態勢がてれなかったり若い人の活動がはばまれたりする状態>

 今年に入ってから相次ぐスポーツ界の不祥事は、まさにこの字義通りではないか。

 リオデジャネイロ五輪体操女子代表の宮川紗江選手(18)が8月29日、記者会見で日本体操協会の塚原千恵子・女子強化本部長(71)らから「パワハラを受けた」と告発し、問題となっている。夫の光男氏(70)は同協会の副会長で、夫妻で体操界に大きな影響を持っていたにもかかわらず、宮川選手の勇気ある告発に対し、賛同する体操関係者の声が相次いでいる。

 これだけではない。今年春には、レスリング女子で五輪4連覇を達成した伊調馨選手が、日本レスリング協会から練習場を使わせないなどのパワハラを受けていたことが発覚。ここでも、協会に大きな影響力を持つ栄和人前強化本部長(58)の独善的な言動や行動が問題となった。

 また、7月には日本ボクシング連盟の役員や元選手が、同連盟の山根明前会長(78)への権力集中を告発。助成金の不正利用や試合用のグローブなどの不透明な販売の実態が表面化。山根会長は自宅の玄関に堂々と「ボクシング協会終身会長」というプレートを出していた。スポーツ協会ではないが、日本大学アメフト部でも内田正人前監督の独裁下でコーチらに指示し、選手に危険なタックルを実行させた事件があった。

 共通するのは、いずれも長い期間にわたって組織に強い影響力を持っていた一部の人物が、年齢を重ねるごとに独裁的な地位を築いていったことだ。なぜ、スポーツ界ではこのような事態が広がり、有望な選手がオリンピックや国際大会から“干される”被害を受けているのか。

 そこで、伊調選手へのパワハラ問題で関係者へのヒアリングを実施し、日本レスリング協会を告発した貞友義典弁護士に、「スポーツ界で老害が生まれる構造」を読み解いてもらった。

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■貞友義典弁護士への一問一答

──スポーツ界では一部の高齢者幹部による独裁的な支配がまかり通っています。その原因は。

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独裁を可能にする“金棒”とは