(提供写真)
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筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」表紙
筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」表紙
筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」に記された人出
筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」に記された人出
筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」に記された人出
筆者が入手した「阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書」に記された人出
いまにし・のりゆき/1966年、大阪府生まれ。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手掛ける。著作に「私は無実です 検察と闘った厚労省官僚 村木厚子の445日」「福島原発の真実 最高幹部の独白」(ともに朝日新聞出版)
いまにし・のりゆき/1966年、大阪府生まれ。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手掛ける。著作に「私は無実です 検察と闘った厚労省官僚 村木厚子の445日」「福島原発の真実 最高幹部の独白」(ともに朝日新聞出版)

「今年ほど、阿波踊りがいろいろな意味で注目されたことはなかった」

【独占入手】阿波おどり経済波及効果分析業務 報告書

 そんな声があちこちから聞かれるのは、400年の歴史を誇り、日本3大盆踊りに数えられる徳島名物の阿波踊りだ。

 阿波踊りを主催する「阿波おどり実行委員会」の発表では、今年の8月12~15日の4日間の人出は108万人。記録が残る1974年以降で最も少なかった。

 その原因の一つとされるのは、阿波踊りの「華」と呼ばれる、総踊りの中止を徳島市の遠藤彰良市長が突然、発表したこと。

 本サイトでスクープしたように、反発した阿波おどり振興協会が13日夜、独自に「総踊り」を決行したことで、大きなニュースになった。阿波踊りに長年、かかわってきた「阿波おどり振興協会」の山田実理事長はこう分析する。

「遠藤市長の強引な手法で阿波踊りの中心、主役の有名連を抑え込み徳島市役所主導でやったことが最大の失敗。実行委員会のメンバーでもある徳島新聞社の利権を牛耳っているという暗部が報道で暴き出され、マイナスイメージが広がった。それが過去最低の108万人という人出になった」

 そんな中、筆者は衝撃的な資料を入手した。108万人という数字は、”水増し”された疑いがあるのだ。

 その資料とは今年1月、大手都銀のシンクタンクが作成した<阿波おどり経済波及効果分析業務報告書>。

 作成を依頼したのは、昨年まで徳島新聞とともに、阿波踊りの主催者だった徳島市観光協会だ。現在は累積赤字のため、破産が決定、事後処理中の協会だが、元幹部はこう証言する。

「この報告書は、確かに去年まで阿波踊りを主催していた、協会と徳島新聞がシンクタンクに依頼したもの。シンクタンクは昨年の阿波踊りの開催期間に実際にやってきて、調査をしていました」

 A4サイズ24枚からなる報告書。目次の最初に<阿波おどり期間中の来場者数の推計>とある。毎年8月12日から15日までの4日間開催される阿波踊り。その来場者を推計し、そこから経済波及効果を導き出そうとしているのだ。

 人出の積算に使用されたのは、大手携帯電話会社の「モバイル空間統計データ」というもの。

<携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口の統計情報です。日本全国の1時間ごとの人口分布を、24時間365日把握することができます。国内人口は性別・年齢層別・居住地域別、訪日外国人は国別の人口構成を知ることができます>とホームページには記されている。あるシンクタンクの幹部はこう解説する。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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報告された衝撃の来場者数