ひとりでも生きていける。でも寄り添って生きていきたい(※写真はイメージ)
ひとりでも生きていける。でも寄り添って生きていきたい(※写真はイメージ)

「私たち、結婚しました!」――続けて届いた2通の結婚報告はがき。お葬式に参列することのほうが増えていたというのに、まさか同年代である50代の友人から結婚話を聞かされるとは。もしかして、と調べたところ、ここ20数年で50歳前後の結婚増加が判明。総数から見れば少ないものの、“50歳からの結婚”が増えていることは間違いないようだ。連載「50歳から結婚してみませんか?」では、結婚という大きな決断を50歳で下すことになった5人の女性の本音とリアルに迫る。第7回は、老親の元を離れ、結婚を選んだ山下さち子さん(仮名・54歳・会社員)の前編をお届けする。

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「京都の大学を卒業して、地元に戻り、就職してから約30年、ずーっと父と母と暮らしてきました。もちろん、年老いた父や母を置いて、家を出ていくことには抵抗がありました。でも、私は彼と結婚して、家を出ました」

 そう語る山下さち子さん(仮名)は、3年前、51歳で2つ歳上の男性と結婚した。

 大学卒業後、地元の企業に就職したさち子さんだったが、学生時代からの夢があった。それは作家になるということ。夢を持ち続け、今では新聞社や県、ペンクラブ主催の文学賞でたびたび入賞、入選するほどの実力だ。

 そんなさち子さんも、作家になる夢を諦めかけた時期がある。40歳を過ぎたころだ。一生懸命書いて応募しても、選ばれず、評価もされない。

「夢を追い続けてきたけれど、自分の才能を冷静に判断できるようになってきたというか……。他に何か自分を活かせるようなことがあるのではないかと。そして、書くことから少し離れ、あれこれ習い事をやってみました。でも……やっぱり私には書くことしかない、もう一度書いてみたい! と、書くことから離れてみて、あらためてそう思ったんです」

 ちょうどそんなとき、誰でも自由に発信できる“ブログ”や“SN”の時代が訪れた。

「知らない誰かが、自由に、書きたいことを書いているのを目の当たりにして、私は誰かに評価されたいわけじゃなく、小説や文章を書きたいだけ。だから、発表する場はどこでもいいって、気づかされました」

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被写体のひとりがフェイスブックを通じて特別な存在に