さらに、三つの選挙をいっぺんにやるには膨大な資金力が必要となり、この面でも自民党は非常に有利になる。

 こうしたシナリオは、経済のことを考えれば、ごく自然に出て来るものだ。これ以外のシナリオは逆に考えにくい。今頃になって、衆参同日選の可能性が浮上して来たなどと書き始めた政治部記者もいるが、それでも未だ少数なのは、政治部の記者たちが経済音痴だからなのかもしれない。

■歴史的偉業を達成した総裁をクビにできないキャンペーン?

 改憲が成立し、与党が衆参で大勝する可能性もかなりある。仮に3分の2は取れなくても議席減少がそれほど大きくなければ、自民党支持層での安倍総理への評価は高まるだろう。少なくとも今年の総裁選で惨敗するかもしれない石破氏や、安倍氏と戦うのを逃げて禅譲に望みをかける岸田氏など敵ではない。強いて挙げれば小泉進次郎氏が最大のライバルという状況になるだろう。

 今年の総裁選後の人事や来年の選挙の公認権、そして、来夏の衆参選挙後の人事などで、まだまだ安倍総理の権力は残る。

 しかし、現在の自民党の党則では、総裁は3選が上限となっている。となれば、今年の総裁選後は、どんなに頑張ってもレームダック化が進むのは避けられない。

 当然、安倍総理側は、その防止策を考えているはずだ。通常の人事などの手段以外に考えられる方策としては二つある。
一つ目は、前述した来夏の衆議院選実施である。その噂を今から流せば、公認権の行使という権力を最大限に活用できる。ただし、それは、来年夏までしか使えない。

 そこで、考えられる二つ目の方策が、「安倍4選」の可能性を意識させることだ。安倍総理は、3選禁止だった党則を変えて今回の総裁選への立候補を可能にしたという実績がある。同じことができないはずはない。総裁選後の党人事で、4選を可能とする党則改正を幹事長候補と密約するということもあるかもしれない。あるいは、幹事長候補がそれを自ら安倍総理に持ちかけるという展開も十分に考えられる。前回の改正の際には二階俊博幹事長がその議論の先頭に立った。今回も、同じ役割を担うことは十分にあり得る。二階派は、自前の総裁候補がいないので、安倍氏と他派閥の総裁候補を自由に天秤にかけられる。安倍新体制の中での優遇措置を得るために4選戦略の先兵になっても全く不思議ではない。

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野望は膨らみ総理から安倍皇帝へ?