18年10月ごろに完成予定で、その後公開される予定だ。天守は鉄筋コンクリート5階建てで、1階は資料などを置く無料ゾーン、2階からはシアタールームや着物体験コーナー、ギャラリーなどを設ける有料ゾーンとする。5階は展望室。地上24メートルという市街地では微妙な高さのため、「AR(拡張現実)などを利用し、昔の街並みも見られるような工夫を考えています」(市の担当者)

 だが、城は建ったら終わりではない。市民らに愛着を持ってもらうことも、今後の維持管理費を集めることも大切だ。市が17年5月から、城で使われる瓦に名前やメッセージを書き込める「一枚瓦」(1枚3000円)や施設内に名前が掲示される「一口城主」(3万円から)などの寄附を募ったところ、予想より早い18年3月で目標額の1億円を突破した。一枚瓦は18年5月末まで、一口城主は11月末まで受け付ける。

「『尼崎にお城ができるのをうれしく思う』『完成を楽しみにしています』など、好意的な声が多く寄せられています。もちろん建設に反対する声もありますが、まれです。『尼崎に誇れるものができる』という市民の期待を感じます」(市の担当者)

 また、城の建設をきっかけに、観光地として尼崎をPRしていこうという機運も高まる。兵庫県内で唯一、地域の観光振興に取り組む観光協会がなかった尼崎市だが、18年3月、一般社団法人あまがさき観光局を設立。尼崎を訪れる観光客に、城を拠点として、近くの寺町や商店街の散策なども回遊してもらう仕組みづくりを進めている。

 大気汚染や地盤沈下など、高度経済成長期には多くの公害問題が起こった尼崎市。事件が多く、「ガラが悪い」イメージもつきまとう。市が17年、市外居住者を対象に行ったインターネットのアンケート調査では、回答者516人のうち、尼崎のイメージを「良くない」と答えたのは30.6%。「良い」と回答した割合の倍以上だった。

 そういう経緯もあり、尼崎城にかかる期待は大きい。市の担当者は「『公害のまち』といわれ、閉塞感もあった尼崎からよい発信をしたい。皆さんに『建ってよかった』と思ってもらえるようなお城にしたい。『お城が勝手に建った』と思われないように、子どもたちへの周知も進める」と意気込む。

 尼崎城から、新しい「アマ」のイメージを発信できるのか。完成が待ち遠しい。(ライター・南文枝)