出願資格は都内在住か、都内の高校などを卒業・卒業見込みの者。医師免許取得後、東京都が指定する医療機関で、小児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療のいずれかの領域で奨学金貸与期間の1.5倍(9年間)以上働けば、各大学の6年間の修学費全額と生活費720万円の返還が免除となる。ただし、定められた勤務を遂行しない場合には、10%の利率で返済しなくてはならないため、注意が必要だ。

 17年春、1期生の5人が2年間の初期臨床研修を終えた。3人が周産期医療、2人が小児医療を選んだという。同試験の立ち上げから担当してきた東京都福祉保健局医療政策部医療調整担当課長の田口健医師は、感慨深そうにこう話す。

「入学した1期生が、指定した診療領域に進むまで8年。長かったですね。まずはホッとしていますが、返還免除まであと6年数カ月あります。9年間働いて立派な医師、よき先輩となってほしい。奨学金は都民の税金です。4領域しか選べないため、覚悟を持って受験してほしいですね」

■最初から地域に残るつもりがないのに…

一方で、地域枠では奨学金を受給したものの途中で返還するケースも増えていて、大きな課題になっている。

 厚生労働省が実施した「平成29年臨床研修修了者アンケート」によると、途中で返還した理由(複数回答可)として、2.4%が「もともと地域医療に従事する気はなく、最初から返還する予定だった」と回答している。

 この回答を裏づけるように、ある医学部予備校の関係者が打ち明けた。

「最初からその地域に残るつもりがないのに、一般入試よりも比較的入りやすいため『地域枠入試』で入学するケースはあります。保護者は『学費を先に払うか、後で払うかの違い』と言っていますね」

■地域への定着を目指し地元出身者に限定

 面接対策をしている受験生は地域に残ることをアピールするが、実情は違うようだ。ある国立大学の医学部長はこう語る。

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