決勝戦を前に校歌を歌う流通経大柏の本田裕一郎監督 (c)朝日新聞社
決勝戦を前に校歌を歌う流通経大柏の本田裕一郎監督 (c)朝日新聞社

 第96回全国高等学校サッカー選手権大会は群馬代表・前橋育英の初優勝という形で終幕を迎えた。敗れた流通経大柏の本田裕一郎監督が試合後の記者会見で「イタチの最後っ屁」と称して残した言葉が話題になっている。「運営最優先ではなく、選手最優先で考えてほしい」として、大会の過密日程の緩和を訴えたのだ。

 一部に誤解もあるようなので補足しておくと、本田監督がこうした主張を行うのはこれが初めてのことではないし、もっと継続的に重ねてきた主張だ。高校選手権の改革案として、本田監督は「ワールドカップ方式のグループステージ制の導入による一発負けの回避」と「全体日程の延伸による連戦の回避」というふたつの主張を行っているわけだ。

 このふたつの主張は実のところ矛盾する面もある。日程を緩和しようとすることと、試合数を増やすことを両立させる必要があるからだ。一方、後者の「日程緩和」に限定して考えるならば、いろいろやりようはあるように思う。個人的にはクラブユース連盟を含めて夏の大会の日程の方が大きな問題だと感じているのだが、ここではひとまず冬の選手権の話に限定して考えてみたい。

 当然ながらカレンダー的に「やれる」と言っても、クリアすべき課題はそれだけではない。非常に当たり前の話だが、会場を増やせばその分だけお金がかかるし、滞在するのにもお金は必要だ。運営スタッフも確保しなければいけない。それを誰がどう負担するかという問題はある。12月31日や正月の三が日は世間的にお休みで、単純に集客が見込めるという背景もあれば、選手の父母や関係者が観戦に来やすいというメリットもある。選手権は前世紀末に集客が低迷して存続の危機に立たされていた経緯もあり、大会関係者が持っている危機感は世間で思われている以上にずっと根強い。

 テレビ放送の問題もある。現状の枠組みですっぽりといろいろなものがうまく収まっていて、良くも悪くも動かすのにエネルギーが必要なことは確かだ。ただ、誤解している方もいるようだが、選手権の日程はもともとあったものからいくつも変更を重ねて現在の形に落ち着いているのであって、もとより「不動」を前提としたものではない。動かないことを前提に話すべきでもないはずなので、まずは「どうせ無理」と思考停止することなく、アイデアを練ってみたい。

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