行くか、引くか。196センチのFWキム・シンウクの存在を考えれば、日本にとって、ゴール前に下がる守備は国際試合ではおすすめできない。はまらなければ、基本的には前へ、前へと、押し出すしかない。
たとえば、韓国の横パスが少しゆるくなったとき、井手口や倉田秋が、あるいは伊東や土居聖真が、勢い良くプレスに出る。他の選手はそのカバーを考えつつ、ポジションを前へ押し出す。そうやって組織をブレークスルーさせれば、「守備がはまらない」状態を解決できる。
しかし、そうやって組織を動かす個人の決断は乏しかった。守備のスイッチが入らない。たとえ入れても、後ろがついてこないか、あるいは、ついてこい!と言えないか。
「もっと前に出るか、後ろに引くか、中途半端だった」
日韓戦だけでなく、欧州遠征のブラジル戦でも、まったく同じ課題があった。守備ブロックの型を守ることばかりに気を取られ、ボールの出所にプレッシャーをかけられない。相手を自由にさせるので、サイドチェンジやロングボールなど、精度の高いパスで仕掛けられてしまう。
世界に出ると、受け身の守備でも何とかなるレベルを越えてくる。型だけを守っても、何の意味もない。代表戦だけでなく、AFCチャンピオンズリーグ決勝のファーストレグ、アル・ヒラル戦の浦和レッズも、辛うじて1失点で済んだが、状況は似ていた。
決め事を守ることに気を取られ、それがはまらないとき、ブレークスルーして組織を動かす意志が、個人に乏しい。
もっと言えば、ブラジルワールドカップのコートジボワール戦も同じだった。守備がはまらないと、状況を打破できず、そのままサンドバッグ状態になってしまう。当時、本田圭佑はそれを「日本人の真面目さが悪い形で出た」と表現していたが、まさにその通り。
これは根深い。
『出る杭は打たれる』の文化が染みつく日本では、組織の責任を負ってプレーする意志が弱い。また、慣れていないので、仮に誰かが『出る杭』になっても、下手をすれば、そのまま浮いた人になってしまう。出る杭のアイデア、個の仕掛けに、みんなでついて行こうと。そういう雰囲気も足りない。