取材当日、編集部員がそろわないなんてことは、ままあることです。取材当日の「バックレ率」は、遅刻・早退率よりも高いです。

 その理由は、やはり当日は緊張や見えない重圧から「行きたいけど行けない」ということが起きるからです。家から出られなくなり、電話をくれることもあります。なので、私は「来たら楽しかっただろうに……」と思いながら、背筋を正して編集部員にビシッと伝えていることがあります。

「取材は会議とは違います。遅刻すると参加ができなくなります。早退するとその日は取材現場には復帰できません。ただし、バックレはまったく問題ありません」

 いま気が付きましたが、私の発言がバックレを誘発している感すらありますね。(一応、付記しますが、取材日は何が起きてもいいように複数人態勢で取材に望んでいます)

■なぜこのルールが必要なのか?

 さて、こうやって仕事はまわっていくのですが、みなさんが気になるのは「遅刻・早退・バックレOKというルールがなぜあるのか」でしょう。

 目的は編集部員の「心の足かせ」を外すためです。「あなたは完璧じゃなくていい」と伝えたくてこのルールを設定しています。

 不登校の当事者や経験者たちは、不登校になる過程や、それ以前の学校・家庭環境のなかで「なんて自分はダメだ」と思わされています。この「自分はダメだ」という思いが、逆に「完璧な自分にならなければ」とか「ちゃんとした人間にならなきゃ」という思いを強くします。

 そこで目標として掲げる「完璧な自分」とは、無遅刻・無欠席で学校や会社へ行き、気持ちの浮き沈みや抱えている問題もまわりに悟らせず、いつもがんばっているけど不満を言わない。そんな姿です。とてもいい目標だと思うかもしれませんが、高すぎる理想は「心の足かせ」になって、余計に動けなくなってしまいます。

 また自分にだけ「完璧」を求めるとはかぎりません。「完璧」に苦しんでいるからこそ他人にも強くそれを求めてしまうことがあります。

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「完璧じゃなくていい」からできること