ランダーのモデルとともに写真におさまるispaceの袴田武史CEO(中央)。右から2番目はispaceのCTOもつとめる吉田和哉・東北大教授(撮影/門間新弥)
ランダーのモデルとともに写真におさまるispaceの袴田武史CEO(中央)。右から2番目はispaceのCTOもつとめる吉田和哉・東北大教授(撮影/門間新弥)
Ispaceが独自開発する月面着陸用のランダーのモデル。小型軽量化を目指す。袴田氏は「日本の町工場の方々の技術が重要です」と話す(撮影/門間新弥)
Ispaceが独自開発する月面着陸用のランダーのモデル。小型軽量化を目指す。袴田氏は「日本の町工場の方々の技術が重要です」と話す(撮影/門間新弥)

 東京オリンピックが開催される2020年まであと2年と少し。この年にもう一つ、楽しみなイベントが加わるかもしれない。民間では日本初となる「月面着陸」を20年末に行う、という計画が発表されたのだ。

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 3年後に月面着陸を、しかも民間の力だけで実現させる――12月13日にそんな壮大な構想を発表したのは宇宙ベンチャー企業「ispace」(本社・東京都港区、袴田武史代表)。現在、米XPRIZE財団が主催する月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に「HAKUTO」チームを率いて参加している。2015年1月には参加チームのうち技術が進んでいるチームに送られる「中間賞」を獲得した。

 いまは月面を探査する探査車(ローバー)の開発に集中し、月にはライバルでもある「チームインダス」(インド)のロケット、着陸船(ランダー)に相乗りして向かい、来年3月までにミッションを実現する予定だ。その次のステップとして、「HAKUTO」では実現しなかったランダーの独自開発に乗り出すのである。

 公表された予定では19年末に月周回を、20年末には月面軟着陸と月面探査を行う。打ち上げ費用は重量に比例してかさむため、世界最軽量級で機動性の高いランダーを開発する予定。コストを抑え、宇宙開発をビジネスとして成立させるという構想だ。産業革新機構を始め12社(追加投資含む)から12月末時点で総額101.5億円を調達。これはシリーズA(スタートアップ企業における製品企画、開発段階での投資ラウンド)としては国内過去最高額だという。ランダーは30キロの荷物を搭載可能で、HAKUTOで開発したローバー「SORATO」の後継機も2台搭載できる。2台のローバーを組み合わせ、月面に複数あるとみられている竪穴の探査も予定している。

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月面着陸で有望視される資源とは?