近年、自治体の業務負担は増大する一方です。認定こども園、地域型保育事業など、新たな分類が増えていることに加え、多くの自治体で施設の数も利用者の数も増えているからです。

 2015年度にスタートした「子ども・子育て支援新制度」では、保育が必要であることを自治体が認定し、親に支給認定証を交付する業務も新たに加わりました。しかし、自治体からは「支給認定証を親が使用する機会はほとんどないため、親・自治体それぞれの負担の軽減の観点から任意交付にしてほしい」という要望が、昨年、内閣府地方分権改革推進室の提案募集に寄せられています。

 前述のとおり、親への情報提供が十分でないため、その分自治体職員は、住民の問い合わせや苦情への対応にも時間を取られています。新制度のスタート時には、「あまりに制度が複雑すぎて、自治体として住民に制度の説明が難しい」との声も聞きました。複雑な制度を理解するための時間や、制度を説明するための時間も、自治体の見えないコストとなっているのです。

 さらに国は自治体に対して、保育施設の質を確保するために、年に一度は実地検査を行うことを求めています。しかし、実際にどうするかは自治体に任されているため、自治体ごとに監査の方法や結果の公表について検討しなければなりません。施設数が増えれば、その分監査業務が膨らみます。

 自治体業務の効率化に向けた取り組みも一部にはありますが、十分に効果を発揮していません。国は新制度の施行状況を一元的に管理するために、3億7202万円かけて市町村、都道府県、国の間で情報を共有する「子ども・子育て支援全国総合システム」を構築し、2015年4月より運用しています。ですが、先月24日に公表された調査では、調査した173市区町のうち、すべてについて最新の情報を登録しているのは、支給認定管理システムで26%、施設等管理システムで13%にとどまっていました。

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