荻田和秀医師/りんくう総合医療センター産婦人科部長(撮影/直江泰治)
荻田和秀医師/りんくう総合医療センター産婦人科部長(撮影/直江泰治)

「出産は病気じゃないから皆、安全だと思い込んでるけど、ボクらは毎日、奇跡のすぐそばにいるから」。人気漫画「コウノドリ」の主人公で産科医である鴻鳥サクラの台詞だ。2015年秋にテレビドラマ化されて好評を博した「コウノドリ」の新シリーズが、10月13日にいよいよスタートする。前作に引き続き、主演の綾野剛のほか吉田羊、星野源らが出演する。発売中のアエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』では、実在するモデル医師に周産期医療などについて話を聞いた。

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 妊娠、出産をめぐる周産期医療のリアルな現場を描いた漫画「コウノドリ」。週刊「モーニング」(講談社)で2012年に始まった連載は、難しいお産をめぐる“命の瀬戸際”の描写で話題を呼び続けている。

「産科医でジャズピアニスト」いう異色の主人公・鴻鳥(こうのとり)サクラのモデルとなったのは、大阪府南部のりんくう総合医療センターで産婦人科部長を務める荻田和秀医師。「コウノドリ」の原作者である漫画家・鈴ノ木ユウ氏の妻の里帰り出産を担当したのが縁だった。

 荻田医師は、こう話す。

「そもそも周産期医療は世間の理解が進んでいない部分が多いですが、男性にしてみたらさらにブラックボックスです。でも、漫画のおかげでお産のリスクの話もすごく説明しやすくなりました。お子さんが簡単につるんと生まれるわけではない、ということをわかっていただける大事なツールですね」

 妊娠や出産がテーマでありながら男性コミック誌でウケているのは、「妊娠・出産時に夫婦の距離感を測りかねている男性が案外多いからでは」と、荻田医師は推測する。

 そんな迷える男性たちに向けた出産育児本『嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本』(講談社)を15年に出版している。妊娠した“嫁ハン”との正しい距離感のとり方、妊娠からお産までの40週の予備知識、お産のリスクなどを絶妙な関西弁を交えて教える。男性もお産にまつわる最小限の正しい情報を知ることで、「多少肩の荷をおろせるかもしれない」と荻田医師は言う。

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