“強い特権意識”も、小池氏には認められる。「自分は特別な人間だから、少々のことは許される」と思い込んでいるからこそ、他の政治家がやってきたことを平気でリセットしたり、思想信条の違う政治家を非情に排除したりするのだろう。

 こうした特権意識を抱くのも当然と思えるほど、小池氏の経歴は立派で、人気もあるが、それが“想像力と共感の欠如”につながっていることは否定しがたい。こういうタイプは、自分自身の言動が相手にどんな影響を与え、どんな反応を引き起こすのか、想像できない。また、相手の気持ちを認識しようとせず、痛みに共感できない。

 だからこそ、リセットも排除もためらいなくやってのけるのだろうが、それがしばしば怒りや反感を買う。たとえば、小池都政に翻弄されて心底憤っている市場関係者が少なくないようだが、こういう方たちの心情を小池氏はどう考えているのだろうか。

 政治家であると同時に神経科医でもあった、イギリスのデービッド・オーエン元外相・厚生相は、「傲慢症候群」という概念を提唱している。オーエンが挙げている「傲慢症候群」14症状のうち、筆者が小池氏に該当すると思うのは、少なくとも次の10症状である。

(1)自己陶酔の傾向があり、「この世は基本的に権力をふるって栄華を極める劇場のようなものだ」と思うことがある。
(2)何かするときは、まずは自分がよく映るようにしたい。何よりも自己イメージを高めたい。
(3)イメージや外見が非常に気になる。
(4)話しているうちに気が高ぶり、自分がまるで偉大な指導者であるかのような態度をとる。
(5)自分の判断を過信しており、他人の助言や批判を見下す傾向がある。
(6)自分の能力を過信しており、「私には無限に近い能力があるのではないか」とさえ思う。
(7)「私の正しさはいずれ歴史か神が立証してくれる」という揺るぎない信念。
(8)せわしなく、むこうみずで衝動的。
(9)大きなビジョンに気をとられがち。「私がやろうとしていることは道義的に正しいので、実用性やコスト、あるいは望み通りの結果が得られない可能性について考慮する必要性はない」と思い込んでいるため。
(10)政策や計画を実行する際に、いわゆる「傲慢な無能」が出てしまう。

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