先発ローテーションの投手は、中6日の調整期間だと、登板翌日は疲労回復を主眼に置いたコンディショニングに充てられ、その翌日に完全休養。残る4日のうち、投球練習が2日、トレーニングを2日というのが通常だ。しかし、東浜に課せられたのは、ウエートトレと体幹トレを『週4日』のペースで行うことだった。ローテの間も、東浜自身が「常に筋肉痛だった」というハードな内容で、登板する日が一番楽ともいわれる裏話まで伝わってきたほどだ。

 しかし、効果は絶大だった。100キロで精いっぱいだったスクワットが、1ヶ月で160キロに改善。筋肉量が増え、体の使い方がより楽になった2016年、135回を投げ、9勝をマーク。それでも、一流の証明といえる「2桁勝利、規定投球回」には、ほんのわずかだが、達していない。

 まだ、足りない……。今年の宮崎キャンプ。東浜は連日ブルペンに入り、投球練習を行った。当然ながら、ウエートトレと体幹トレは、毎日のルーティンだ。先発ローテ入りが確実視されていた立場では、開幕に合わせた調整を行ったところで、もはや誰もとがめはしない。それでも東浜は、練習の内容を、決して緩めようとはしなかった。

「きついです。でも、いい結果が出ていますから」

 心と体が、プロのたくましさを帯びてきた。それは、飛躍のときを告げる予兆でもあった。高校時代から東浜を見続けてきたソフトバンクの永山勝・アマスカウトチーフも「体作りをしっかりやらないと、プロの世界では投げられない。その理解をした上で、本人が意識を高く持って取り組んだ成果でしょう」と証言する。

 和田毅、武田翔太、千賀滉大ら、先発陣が故障、相次いで離脱した今季、東浜は最後の最後までローテを守り抜いた。楽天との激しい首位争いが展開された夏の戦い。東浜は、7月7日から8月18日まで6連勝と、大車輪の活躍を見せた。優勝を決める一戦で挙げた16勝目は、リーグの最多勝争いで単独トップ。積み上げた勝ち数も文句なしだが、1つ1つの白星の内容の濃さに、シーズンMVPの声も挙がっている。

 5年前、プロの壁にもろくもはね返された。長く悩み続けた日々が続いた。しかし、そこから東浜は自分の力で這い上がってきた。自らの可能性を信じ、たゆまぬ努力を続けてきた男は、工藤という絶好の恩師にも出会い、5年という月日をかけて、その素質をやっと開花させたのだ。(文・喜瀬雅則)