■リスク2 高血圧

 とくに中年期の高血圧は認知症発症リスクが高いとされています。降圧剤を服用して血圧をコントロールすることで、認知症の発症や認知機能の低下が抑制されたという報告は国内外であります。高血圧と認知症発症の関係について、里医師はこう話します。

「高血圧により動脈硬化など血管の障害が起こることが要因と考えられます。脳の血管はからだのほかの部分の血管と構造が異なり、傷つきやすい傾向があります。血圧が高くなると出血が起こりやすくなり、血管に障害が起こることで神経細胞がダメージを受け、認知症を発症しやすくなるのです」

 高血圧に糖尿病を合併している場合は、さらにリスクが高まると言います。

「糖尿病が進むと腎臓の障害を起こしやすく、うまく尿が作れなくなることで体液がたまり、さらに血圧が上がりやすくなるため、より注意が必要です」(里医師)

■リスク3 アルコール

 飲酒については、慢性アルコール依存症になるくらい常習的に、かつ多量に飲酒をした場合には、アルコールそのものの毒性や低栄養、ビタミンB1の欠乏、脳血管障害などによって、ウェルニッケ・コルサコフ症候群という脳の病気や、アルコール性認知症の発症につながります。つまり、大量の飲酒は直接的な認知症の原因になり得ると考えられます。

 一方、少量の飲酒は認知症のリスクを減少させるという報告もありますが、これについて新井医師はこう指摘します。

「飲酒歴が後年の脳萎縮に影響する可能性があること、アルコールが睡眠の質を悪くすることがあるといわれることから、少量でも毎日飲酒することは、認知症のリスク因子になると考えられるでしょう」

■リスク4 脂質異常症

 脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が基準値より多い状態を言います。脂質異常症は動脈硬化の原因になり、心臓や脳の血管に障害が起こりやすくなるため、とくに中年期の脂質異常症は認知症のリスクになり得ると里医師は指摘します。

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