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若者の快楽と罪悪感… 江戸・明治の青年が残した“秘められた記録”

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氏家幹人(うじいえ・みきと)/1954年、福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)。武士の世界や江戸の風俗をテーマにした作品が多く、その軽妙洒脱な筆致が人気。『武士道とエロス』『江戸の怪奇譚』『古文書に見る江戸犯罪考』など著書多数(撮影/写真部・片山菜緒子)

氏家幹人(うじいえ・みきと)/1954年、福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)。武士の世界や江戸の風俗をテーマにした作品が多く、その軽妙洒脱な筆致が人気。『武士道とエロス』『江戸の怪奇譚』『古文書に見る江戸犯罪考』など著書多数(撮影/写真部・片山菜緒子)

性なる江戸の秘め談義(朝日文庫)

氏家幹人著
定価:778円(税込)

978-4022619075

amazonamazon.co.jp

 不倫、BL、人妻のホストクラブ通い――。これ、実はお江戸の話。われらがご先祖さまたちも、現代と同じように性を楽しみ、翻弄されていた。さまざまな文献から江戸や明治時代の性愛を読み解いた『性なる江戸の秘め談義』の著者で歴史学者の氏家幹人さんに聞く「江戸のエロス」とは?

*  *  *
『性なる江戸の秘め談義』では、江戸や明治期の文献、日記などさまざまな資料に記された生々しい性愛の記録を75話の「夜話」にまとめて解説したのですが、当時の人たちが自らの性生活について赤裸々に記していることに驚きました。

 たとえば中国には、そういった前近代の記録はほとんどありません。戦で焼失したこともあるのですが、そもそも性的なことを書いたり話したりするのを中国人は嫌がります。それに比べると、日本人は記録好きで、さらに性について書き記すことにもあまり抵抗がないのかもしれないですね。

 中でも青年武士・岩松満次郎俊純の日記は、実に興味深い記録でした。新田家と足利家の流れを組む名門の継嗣(けいし)で、幕末には「新田官軍」として新政府軍に従い、明治期には男爵の称号も与えられた人物です。日記が書かれた嘉永6(1853)年は、浦賀にペリーが来航し、その後まもなく将軍・徳川家慶が死去した激動の年。そんな中、家督を継ぐ前だったとはいえ、俊純は何月何日に誰と何回やって、何回絶頂に達したか、あるいは何回イカセタかなど、ただただセックスの記録だけを記し続けているのです。

 明治の文献として取り上げた俳人・荻原井泉水が10代に記した日記は、まさに「青春手淫日記」。「手淫(しゅいん)」つまりマスターベーションがもたらす快楽と罪悪感との間で揺れ、脳に悪影響があるからと「手淫禁止」を誓ったり、かと思えば我慢できずにすぐにその禁を破って落ち込んだり。そんな若さゆえのイライラと悶々が延々と書かれています。

 性愛やエロスというと春画や春本がありますが、あれはまあポルノにすぎない。リアルな性生活がどうだったのかは、個人の日記はもちろん、幕府や藩に残っている公文書などを細かく見ていくと、わずかながらその中に記録が残っていることがある。ところが、もっともきちんと管理されていただろうはずの記録がない。大奥の記録です。


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