しかし上野の命の危機をきっかけに、再結集した。今回のアルバムのために、森友は新曲を書いた。「ずっと君を」という、T-BOLANらしいせつないラヴソングだ。

「T-BOLANのイメージはラヴソングです。だから、新曲もラヴソング。もっともパッションを引っ張ってくれるのが恋愛だからです。誰かを想う。大切な誰かを守りたい。そういう人の本能が新しい何を生む。だからこそ普遍的なラヴソングを歌いたい。その思いから1991年に『離したくはない』が生まれ、1990年代のファンから絶大な人気を誇るラブソングの「Lovin' You」のアンサーソングとして『ずっと君を』を書きました。

 T-BOLANはずっと継続しているのだ。

「4人で突っ走った1990年代の続きにしたかった。T-BOLANは突然僕が声を失い、活動停止を余儀なくされました。歌えなくなったので、解散コンサートもやっていません。区切りのついていないバンドです。だから、できるだけ当時のレコーディング・スタッフを集めて、かつてのT-BOLANに近い音にしたかった」

 その意図は見事に成功した。アルバムの1曲目は「ずっと君を」。その後「夏の終わりに」があり、かつてのT-BOLANの名曲が続く。新曲も1990年代の曲も、まったく違和感なく聴くことができる。

「バンドは家族です。ツアーでも、おたがい過度に気を遣うことはありません。けんかもします。そういう関係性だからこそ生まれる音が間違いなくある。五味が言っていましたが、バンドの音っていびつなんです。ソロは、音の完成形をイメージして、そこから逆算して最良のメンバーを集めます。だから、出来上がった音はソリッドです。バンドは逆。まずメンバーがいて、音を出して、出来上がったのがそのバンドの個性です。だから、いびつです。でも、そのでこぼこが色気を生みます」

 バンドだからこそ、4人のメンバーがそろっているからこその音が間違いなくある。たとえば、ローリング・ストーンズの曲はローリング・ストーンズが演奏してこその味がある。ヴォーカルのミック・ジャガーが、超一流の腕利きミュージシャンを集めてストーンズの曲をやっても、ストーンズの魅力の再現は難しい。

次のページ