動物病院で使われる認知機能のチェックリスト
動物病院で使われる認知機能のチェックリスト

 認知症になるのはなにも、人間だけではない。犬も、加齢とともに認知機能が衰えていくという。愛犬の変化など、思い当たる飼い主はいないだろうか。週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」では、専門家に犬の認知症についても尋ねた。

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「最近は医療などの発達で犬も長生きするようになったため、認知症の問題がより顕著になってきました」

 こう話すのは、獣医師で北里大学獣医学部客員教授も務める日本ヒルズ・コルゲート社プロフェッショナル獣医学術部の入交眞巳(いりまじりまみ)さんです。認知症の発症がみられ始める年齢は、7~8歳ごろ。入交さんが961匹を対象におこなった調査では、8歳以上の犬の約20%に、軽度認知障害の可能性があると疑われる行動がみられました。18、19歳になれば多くの犬が発症すると考えられています。

 症状としては、外に出たいのにドアの蝶番(ちょうつがい)側に頭を向けて外に出ようとする、家族が帰ってきたのに顔を認識できず不安がる、徘徊(はいかい)、トイレの場所がわからずにお漏らしなどが挙げられるそうです。

 治療は、まず食事療法や、散歩を含む無理のない運動で認知機能の維持改善を目指します。ビタミンE、CやDHA/EPA、α-リポ酸などの抗酸化物質や脳の機能回復に役立つ栄養素を取り入れたドッグフードを食べさせ、知育玩具などを用いて運動させて脳に刺激を与えます。

「認知症予備軍や症状が軽いうちに食事療法と運動を適切におこなうことで、大きく症状が改善する例もあります」(入交さん)

症状が進行した場合は、サプリメント、最後に薬物療法を始めます。薬は、アリセプトなどの認知症治療薬を症状や状況に合わせて用い、対処療法として抗不安剤や睡眠導入剤を使うこともあるそうです。

「犬が年を重ねてきたな、と思ったら早めに専門の獣医に相談をしてください。また、認知症ではなく、ほかの病気が潜んでいる可能性もあります。飼い主の判断でサプリメントなどをあげるのではなく、まずは動物病院にご相談ください」(同)