図は、研究データから導き出された「1年の1日平均の身体活動からわかる予防基準」をグラフ化したものです。歩数と、そのうち速歩きをした時間と、病気の予防ラインとを示しています。

 認知症は、歩数が5千歩以上、そのうち速歩き(中強度)の時間が7.5分以上だと、発症者がいなかったという結果を表しています。この7.5分は、継続しても、断続的におこなって合計時間で換算してもよいのだそうです。

 同様に、骨粗鬆症やがんは7千歩で15分以上、高血圧や糖尿病は8千歩以上が予防ラインになります。ここでひとつ疑問が湧きます。やっぱり、たくさん歩きさえすれば万病に効果があるのでは、と。青栁さんは話します。

「いいえ。運動のしすぎは逆に免疫力を低下させ病気になりやすくなりますし、強すぎる運動は活性酸素を増やし、からだの老化を早めるといわれています。しかもたくさん歩いても健康効果は頭打ちで、例えば1日平均1万2千歩、中強度40分以上を続けたとしても、8千歩、中強度20分の人と健康効果が変わらないことが研究で明らかになっています」

 歩きすぎは慢性疲労につながり、ケガや病気の原因にも。適度な歩数と運動強度のバランスを整えることが重要なのです。

■年齢と体力で異なる強度 自分に合った中強度を知ろう

 ただ、注意点もあるそうです。

「運動強度とはその人の体力や年齢で変わります。同じ歩数と速度でも20代では低強度、50代では高強度となりうるのです」

 大切なのは自分にとっての中強度を知ることだといいます。

「ほとんどの年代、特に中高年以降の年代の人にとって“なんとか会話ができる程度の速歩き”が、その人の中強度の目安です」

 こうした個人差のある身体活動をわかりやすく管理するために、青栁さんは活動量計の活用を推奨しています。

「歩数や運動強度、消費カロリーなど、その人の1日の生活の活動すべてを測るので、より効果的な健康づくりの指針となります」

 ウォーキングは、年齢がいくつでも始めるのに遅くはないという青栁さん。まずは、一歩踏み出してみませんか。(取材・文/内山賢一)