猿田佐世(さるた・さよ)/シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」事務局長・弁護士(日本・ニューヨーク州)。各外交・政治問題について、ワシントンにおいて米議会等にロビイングを行う他、国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。研究テーマは日米外交の制度論。著書に「新しい日米外交を切り拓く(集英社)」「自発的対米従属(角川新書)」など
猿田佐世(さるた・さよ)/シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」事務局長・弁護士(日本・ニューヨーク州)。各外交・政治問題について、ワシントンにおいて米議会等にロビイングを行う他、国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。研究テーマは日米外交の制度論。著書に「新しい日米外交を切り拓く(集英社)」「自発的対米従属(角川新書)」など
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「ワシントン便り」第2弾をお届けしたい。沖縄県辺野古の基地建設に反対の沖縄の声を伝えるため、米国・ワシントンを訪問中である。10日間かけ、米議会の関係者を回り、また、米国防総省の官僚やワシントンの街の日本専門家(Japan experts)と意見交換をした後の雑感を述べたい。

 トランプ政権は、日本のメディアでも報道されている通り、内政で泥沼に陥っている。

 オバマケア見直しの法案が通るか通らないかという連邦議会の審議のさなかであり、共和党からも離反者が出て審議は難航し、また公約を実現できないことになるのでは、という状況にある。

 そんな中で、トランプ氏自身は一部の例外を除いて、外交全般について関心が低い。日米関係については、外交・防衛を担当する国務省・国防総省において政治任用される官僚の任命が進んでおらず、省内はスカスカの状態だ。長官以下数人のトップクラスの高官と、下の事務方のみが存在し、日米関係の政策面について具体的な判断をおこなうはずの国務次官補クラスは実質上空席のまま。いつ任命されるのか、任命する気もないのでは、という評価すら耳にした。

「駐留経費を全額日本が負担せねば米軍撤退」と述べていたトランプ氏の大統領当選で何か動くか、と思われた日米外交であったが、選挙直後に安倍首相がニューヨークに飛んでいくなどして日本政府はトランプ氏を囲い込み、2月に行われた首脳会談では、今までの日米外交路線を堅持させることを氏に約束させた。沖縄の辺野古の基地問題についても、「辺野古が普天間移設の唯一の解決策」と日米共同声明は記載している。トランプ氏と安倍氏の波長はとてもよく合っていて、日本政府はその望むところを実現するために実にうまくやった、というのが日米外交関係者一般の評である。

 このようにトランプ大統領と安倍首相の関係が「良好」であり従来の日米関係の継続が予想されることや、米国側で対日政策を担う担当者がいないという状況が相まって、多くの日米外交における課題について、米政府側では具体的検討もしないし、できない状態になっている。沖縄の問題についても、日米原子力協定の問題(来年7月に協定満期を迎える。)などについても、具体的検討がなされている様子はない。

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